気持ちや行動の切り替えが極度に苦手で、今の行動をやめて次の行動に移れない子。これは、まさにうちの息子です。
気持ち・行動の切り替えができない子は、日常生活にある普通の行動を1つ1つこなすのも超大変!
行動をスムーズに切り替えられるための工夫を、毎日考え続けています。
今回は、市販の「できたよマグネット」の商品レビューです。自閉症スペクトラムな子が、実際に使ってみてどうだったのでしょうか。
「できたよマグネット」のメリット・デメリット・使い方をまとめました。
朝起きて夜寝るまでの”やること”を12ピースで「見える化」
「できたよマグネット」は、朝起きてから夜寝るまでの基本的な身支度(行動)が分かりやすいイラストで描かれたマグネットです。
ひっくり返すと、「できた!」と書かれたニコニコ顔のマグネットになっている、両面タイプです。
「できたよ!」顔は、イラストによって顔が違ってかわいいです。
例えば「ごはんをたべる」の「できた!」顔は、口の周りにご飯粒を付けた顔。「はをみがく」の「できた!」顔は、ピッカピカの歯を見せた顔です。
全12ピースのうち、9ピースはイラスト固定です。
- ごはんをたべる
- しょっきをはこぶ
- きがえをする
- じゅんびをする
- はをみがく
- てあらい・うがい
- おふろにはいる
- かおをあらう
- といれにいく
の9つの身支度行動は、既にイラスト化されています。
残りの3ピースは、無地なのでアレンジ自在。9つの行動以外で、よく使う行動を3つ選んで、自分で書き込んで使います。
これから自分がする行動が「見える化」されているというのは、マグネットを見た時点で、行動の全量が視覚に訴えられて良いですね。
朝用と夜用に分けて並べる”事前準備”が必要!基本的な使い方
「できたよマグネット」を見て、最初にアレンジすべきポイントは、必要な行動マグネットだけを抜粋して、子供の行動に合わせて順番に並べる、ということだと思います。
そこで、朝は息子が起きてくる前に、朝用の身支度行動マグネットを選んで並べておく。夜は息子が保育園から帰ってくる前に、夜用の身支度行動マグネットを選んで並べておく…という準備が必要でした。
■朝用マグネット
- といれにいく
- かおをあらう
- きがえをする
- ごはんをたべる
- はをみがく
- うんちをする(手書き)
■夜用マグネット
- てあらい・うがい
- ごはんをたべる
- くもん(自作)
- おふろにはいる
- かたづける(手書き)
- はをみがく
- といれにいく
- ねる(手書き)
こんな感じで、朝と夜の2回。
必要なマグネットだけを抜粋して、息子の行動順に並べておきました。
これを最初は、1つの行動が終わる度に、喜んでひっくり返していくわけですが・・・。
デメリット1.「ひっくり返す」作業自体にこだわり、”これからやる作業”になってしまう。
行動が「見える化」されていること自体は、視覚優位な発達障害の特徴がある子にとってメリットの1つではありました。
しかし、気持ち&切り替えが苦手な子にとっては「できたよマグネット」の本来のメリットが仇となる事態が起こりました。
1つの行動が終わって「できたよマグネット」をひっくり返し、さぁ次の行動へ!という場面。本来であれば、次のマグネットもひっくり返したくて、次の行動をさっさと終えてからマグネットの場所に戻ってくるのでしょう。
自閉症スペクトラム・こだわりが強い子の場合は、違いました。
次のマグネットもひっくり返したくて、その場でどんどんひっくり返してしまうのです。
全部「できたよ!」の黄色い顔になるまでひっくり返し、「できたよ!」の顔が並ぶこと自体に大満足。行動が終わる/終わっていないは関係なく、ひっくり返す作業自体にこだわり、ひっくり返す作業自体が”これからやる作業”になってしまうのです。
ひっくり返したいのに、今はまだひっくり返せないことが分かると、癇癪でした。
デメリット2.「ひと目」で分かるからこそパニックになる。
「できたよマグネット」のメリットが仇になる事件、もう1つ。
「できたよマグネット」自体は、まだ終わっていない行動が「ひと目」で分かり、「あと何が残っているかな?」と問いかけながら子供の気付きを与え、自己管理能力を伸ばす…という優れモノです。
しかし、自閉症スペクトラムな子が、まだ終わっていない行動マグネットを見て、「ひと目」であれもこれも終わっていない事が分かると、さぁ大変です。
今1つ終わったのに、あれが終わってない!
今やろうと思ってたのに、あっちも終わってなかった!
「はみがき」したのに「かたづけ」の前で良いんだっけ?
もう疲れたのに、こんなにマグネットが残ってる!
わー!
という思考回路が予想されますが、これがマグネットを見た瞬間に頭を巡ってパニック状態。「ひと目」で認識した状況と色々終わっていない事実が混ざりに混ざって、どうしたらよいか分からずパニックになるのです。
デメリット3.マグネットをひっくり返すタイミングが行動の流れの邪魔をする。
それから、ほとんど使わなかったマグネットが2つ。「しょっきをはこぶ」と「じゅんびをする」です。
この2つに共通したのは、行動ができた時とマグネットをひっくり返すタイミングがどうも上手く合いませんでした。
食器を運んでくれる時、5歳くらいまでは、自分の食器全部を一度に運べないことが多いと思います。
コップを持ってきて、お皿を持ってきて、お箸をもってきて…とやってくる度に、頭をなで口頭でも褒め、そして最後に完結して褒めたたえると、本人はできた達成感と喜びを胸に、走り去ってしまいます。
そこにはお皿を割らないように気を張って運んだ影響で、大きく安堵感もあるようで、走り去った後どうするかと言うと、全身の力が抜けたようにリビングの床やソファに寝転がります。
その時に、「できたよマグネットをひっくり返そう」とは言えないのです。
同じように、「じゅんびする」マグネットは、準備し終わったら靴を履いて”行ってきます”の体勢なので、マグネットをひっくり返すタイミングを上手くとれないことが多かったです。
それに加えて、「じゅんびする」って何を?
自閉症スペクトラムな子には、曖昧な表現では本質が伝わらないことが多いです。
「鞄を持ってくる」「靴をはく」「玄関に行く」-
そういう表現を使うので、「じゅんびする」マグネットは一番使いませんでした。
このように、本来の「できた!」の喜びに対して、マグネットをひっくり返すことが行動の流れの邪魔をしてしまうマグネットもありました。
デメリット4.できたよマグネットだけで「最終的には時計に合わせて」は無理!
「できたよマグネット」は最終的に、”時計に合わせていつまでに何を終わらせるのかを自分で管理できるように繋げる”という目的があります。
視覚優位な自閉症スペクトラムな子に、「できたよマグネット」だけを使って、時計を意識させるのは、かなり無理なレベルでした。
マグネットとは別の場所にある時計を見ながら、終わらせる時間を把握し、マグネットをひっくり返しに行き、次の行動を把握したら、また時計を見ながら行動する・・・なんて、かなり高度です。
これは、工夫次第でアレンジ可能という「できたよマグネット」のメリットにも繋がるのですが、「できたよマグネット」だけを使って、時間まで視覚に訴えるのはハードです。
ということで、「できたよマグネット」を使い始めて、早い段階で確立した方法が、時計(時間を現す)絵と一緒に使う方法でした。
メリット1.丸いマグネットは時計の絵と並べると視覚効果あり!
「できたよマグネット」は、形が丸いので、時計の丸いフォルムと一緒。隣に並べると、時計と行動の絵がすんなりと視覚に訴えられます。
一番左に「時間の絵」、その右側に「行動の絵」が丸くポンポン並ぶことで、時計の針の位置と、これからやる行動が、深く考えなくても何となく頭に入ります。
「できたよマグネット」とほぼ同じ大きさの時計の絵を書き、その横に該当する行動マグネットを並べることで、視覚効果がアップしました。
メリット2.アレンジ重要!マグネットだから”計画”を自分で動かせる。
息子にとって「できたよマグネット」は、時間の絵と並べることで効果を発揮し始めました。
ここに、効果ポイントは2つあると思っています。
1つ目は、「できたよマグネット」と一緒に並べる時間(時計の絵)は、30分刻みの大枠であること。
2つ目は、子供でも動かせる「できたよマグネット」だからこそ、自分で動かして計画を立てること。
の2つです。
30分というスケジュール枠から、当初の計画だった身支度行動がはみ出てしまっても、次の30分枠に入れ込めば、最終的な時間を守る猶予は残されています。
時間を守れなかった行動の計画をずらす時、息子に自分でマグネットを動かしてもらいます。
自分で動かせば、次のスケジュール枠では絶対やるぞ!という気持ちもアップ。最後の時間枠で、最終的に「できた!」になれば、私も息子も気持ちがスッキリ!でした。
行動の切り替えが苦手な子の「できたよマグネット」の使い方を分析!
ここまでで、時間を現す「時計の絵」と「できたよマグネット」を並べて視覚化して、マグネットを利用する方法が効果あり、と分かりました。
しかし、その時間が小刻みで、いつも守れない状況が続けば、「できたよ!」の達成感を体験することを”始める”ためのグッズなのに、何の意味も成さないことになります。
少しでも「できたよ!」の場面を作るために、まずは幼児のスケジュール枠なんて30分刻みくらいが調度良いのだと実感しました。
スケジュールが30分刻みの場合、数分で終わるような身支度行動は、30分間の中に「できたよマグネット」2~3個が入ることになります。
もしも最初に決めた30分枠で終わらなかった行動があっても、そこで怒らず、次の30分枠に自分で動かしてもらいましょう。
9時までと決めた「かたづけ」が終わらなくても、9時半に「べっとにいく」までに片付けようと言って、「かたづけ」マグネットは9時半の枠にずらしてもらいます。
気持ち・行動の切り替えが苦手な子の行動スケジューリングは、時間枠を大枠で取り、その中に「できたよマグネット」を当てはめて、行動計画を後ろにずらしながら、最後の行動の”おわり時間”は守る!という使い方が良かったです。
最後の行動の終わり時間-。
朝なら「行ってきます」の時間、夜なら「おやすみなさい」の時間だと思いますが、これを守るための手法は、「できたよマグネット」には頼れません。別記事で一緒に考えていきましょう!
行動の切り替えが苦手な子が使う「できたよマグネット」のメリット・デメリット・使い方まとめ
誰が使うかによって、「できたよマグネット」は使い方まで変わってくるも、それだけアレンジ自在ということも分かりました。
「できたよマグネット」は、
・朝起きて夜寝るまでの”やること”が「見える化」できる
・マグネットをひっくり返すことで楽しみながら「できた!」を体験できる
という基本的なメリットを踏まえた上で、子供に合った使い方にアレンジする必要がありました。
一人でどんどんできる子なら、朝用と夜用に1日2回、「できたよマグネット」を並べて事前準備しておき、後は一緒にサポートする程度で良さそうです。
自閉症スペクトラム・気持ちや行動の切り替えが苦手な子は、マグネット「ひっくり返す」作業自体が目的になったり、こだわったり、ひっくり返せない事に癇癪を起こしたりするかもしれません。
「できたらひっくり返す」こと自体を強調せず、「できた!」を体験させることを優先すると、成功しました。
また、「できたよマグネット」だけに頼るのではなく、同じ大きさの〇に時計を描いて、各種行動マグネットと並べて視覚効果をアップさせたり、子供でも動かせるマグネットを自分で移動させたりして、「気持ち・行動の切り替え」の手助けになる方法を取り入れました。
真っ白の3ピースは、時計に使うのも、良いアイデアかも!しれません。
私は、毎日の息子の行動には「くもんの宿題」があり、これを夜の時間に入れ込むのが今でも苦労しています。
とりあえず「くもん」マグネットを自作して、「できたよマグネット」に混ぜて使っています。
※「おうちのやることマグネット」もあります。