息子は5歳の時、「わざと怒られることをする」行動が目立ち、親を困らせました。
ただ直感的に、いわゆる「愛着障害」や「試し行動」とは少し違う感じがしました。
息子の「わざと怒らせる行動」には共通パターンもあり、私なりに分析してみました。
ASD(発達障害)は関係ない!?
息子は自閉症スペクトラム(ASD。いわゆる発達障害の1つ)の特性がありますが、この「試し行動」もどきな行動に関しては、息子のどんな特性や心理がそうさせているのか分かり辛かったです。
頑張って理解しようと寄り添っても、不安症・強いこだわり・感覚過敏・感覚統合など1つ1つの特性からくるものだ…とも言い切れず、対処しにくいものでした。
もはや発達障害の特性や対処法とは関係ない、ただの我がままや気分的なものなのか?と思ったこともあります。
だからと言って、問題行動をこのまま見過すわけにもいかず、試行錯誤していました。
納得・理解しているはずなのに、わざと怒られることをする
過去によく言い聞かせて、本人が納得しているはずのことなのに、息子は「わざと」やることがありました。
それが「悪いこと」「怒られること」「お母さんが困ること」だと絶対に理解しているのに、「わざと」繰り返しやるのです。
なぜだろう?
いわゆる「試し行動」とはちょっと違う!
親からの愛情を確かめるために、「試し行動」という問題行動がありますが、それとは違いました。
息子の場合、愛着形成が上手くいってないとか、愛着障害とかの理由ではしっくりこない感じで、むしろ「そうじゃない」と感じました。
息子の「わざと怒られる行動」は、相手にされるか試したり、怒られるか試したり、何かを試すための行動ではなかったので、いわゆる「試し行動」とは違うと思います。
「試す」ではなく「確信あり」だからこそ、わざとやる
息子が「わざと怒られることをする」時は、だいたいシチュエーションが決まっていました。
私の反応を「試す」のではなく、私の反応が「分かっている」からこそ、わざとやっていました。
それを言ったり、その行動をしたりすれば、私が怒ると知っていて確信があるからこそ、息子は「わざと怒られる行動」をしていたのです。
どんな時に「わざと怒られること」をする?
では、どんな時に「わざと怒られること」をするのでしょうか。
一番目立ったのは、
・保育園に迎えに行った時
・嫌なことをお友達にされた時(我慢した時)
でした。
私が家事などで手が離せずに構ってあげられない場面ではなく、忙しいから「待っててね」と一人で待たせた場面でもありません。
保育園にお迎えで私が息子の前に現れた時と、お友達とのトラブルを私が見ている時、です。
どちらも不思議なのは、私の姿に気が付くまでは普通に過ごしていたのに、私の存在に気が付いた途端、わざと悪いことや怒られることをしました。
私の表情を確かめながら、わざと!
私(母親)の姿に気が付いた時「わざと怒られる行動」を始める
保育園のお迎え時、私はすぐに姿を現さず、ドア越しや園庭の隅から息子の様子を少し伺っていました。
私がいない時に、息子が集団の中でどのように過ごしているか、保育園生活の様子を知るためです。
私が密かに見ていると、みんなで床一面に広げたレゴブロックを囲み、息子は大人しくブロックで遊んでいました。
その様子に安心して、私が教室に入って(or そばに行って)姿を見せると、息子の様子が一変!!
私が迎えに来たことに気が付くと、息子はみるみる不機嫌になり、「わざと怒られる行動」が始まりました。
「わざと怒られる行動」ってどんなこと?(事例)
例えば、今までブロック遊びをしていた時。
私の存在に気が付いた途端、ブロック遊びの手が止まり、無言でブロックパーツをイジイジし始めます。
朝は「早く迎えに来て」とか言って、あんなに保育園を嫌がっていたのに。いざ迎えに来たら、どうして喜びもせず、いじけた態度をとり始めたんだろう?
…と思うのと同時くらいに、私の顔をチラチラ見てきて、私が自分(=息子)を見ていることが分かると、
今にも「このブロックを投げるぞ!」という顔をして、ブロックパーツ1つを片手に振り被るのです。
手に持っていた、組み立て中のブロックの作品…じゃないですよ。
わざわざ、ブロック作品から1つだけパーツを外して、それを右手に持って振り上げて構えるのです。
しかも、投げ付ける…じゃないですよ。
私をチラ見しながら、怒った顔で、ブロックパーツを1つだけ握りしめて「振り被る」のです。
息子は「ブロックを投げようとすれば、お母さんに注意される」と絶対に分かった上で、ブロック(の外したパーツ)を振り被っていました。
「わざと怒られる行動」をスローモーションで見せつける
ブロックを投げようと振り被れば、その段階で怒られる…と息子は分かっています。
案の定、息子が振り被った時点で、私に「ダメ!投げないよ!」と言われるわけですが、この後の息子がブロックを投げる行動は、更に特徴的でした。
「我慢が爆発して投げ付ける」という感じではなく、スローモーションで再生したような投げ付け方。
感情を爆発させて感情コントロールが効かなくなった時とは様子が違いました。
私が見ていれば怒ると分かっているのに、わざと怒られることをして、私が気が付かない時は、もう一度”再生”するのです。
ブロックパーツを床に投げる仕草を、スローモーションで演じる感じです。
単なる怒りを爆発させている訳ではなく、やったらダメなこと(=ブロックを投げる)をわざと私に見せつけているのが分かりました。
親がいない集団生活中は、教えを守って我慢していた
保育園のお迎えの時、息子が私に気が付かない間に様子を伺っていると、お友達同士のトラブル(ケンカ)場面にもよく出くわしました。
ドア窓のガラス越しに見える様子から、ケンカをしていると分かります。
息子がお友達とケンカしそうな雰囲気になった時、私は息子がどうやって対処するのか見守るため、わざと隠れて見ていたことがありました。
息子はたいてい、やり返すのも泣くのも堪えて我慢していました。
やり返したら「怒られる行動」も、お友達を叩くような「悪いこと」も、ちゃんと我慢していました。
お友達が蹴ってきても『人を蹴ってはいけない』と教えているので、蹴らずに我慢していました。
そこに仲介役の先生がやってくると、少し安心して泣き出す…というパターンが多かったです。
ここまでの場面では、息子はとても聞き分けの良い子に見えました。
「わざと怒られる行動」や「わざと悪いこと」なんて、していないのです。このタイミングでは!
母親だけに「わざと怒られること」をして行動アピール
それなのに、私が登場した場合はどうでしょう。
「先生も忙しそうだし、ケンカが複雑化する前に、息子を連れて帰ろう」と思い、私が姿を現した途端、前述の我慢強い息子が嘘のように豹変。
私が怒ると分かっている行動を、わざと見せようとします。
例えば、お友達に蹴られた後で、自分は蹴るのを我慢していた場合。
私の顔をチラ見しながら、お友達に向かって片足を上げ、「蹴とばしそうなポーズ」で停止して、蹴る真似(いや、蹴ろうと構えた真似)をします。
感情に任せて本当に蹴ったりはしないので、この間、片足でバランスをとっている感じです。
私が「やらないよ!帰ろう」と言うと、待ってましたと言わんばかりに、息子のスローモーションの演技?は、お友達に自分の片足の裏を付ける寸前まで進みます。
キックする場面をスローモーションで一時停止しながら再生している感じです。
そこから、エイっと(キックまでいかないけど押す感じで)友達に触れた途端、怒られる前に怒られたと思い込んで私の顔を見ながら泣いてパニックでした。
なぜ母親だけに「わざと怒られる行動」をして困らせる?
私が経験した事例では、今まで何らかの我慢をしていた・我慢して頑張っていた所に私(=安心できる人)が現れたという場面が多かったです。
その時の息子の気持ちを考えると、今まで不可解だった「わざと怒られる行動」の理由が少し解った気がしました。
苦手な集団生活で、教えられたことを守ろうと一人で頑張って、何かを一生懸命に我慢していた。
(あ、お母さんだ、やっと安心)→ ホッとして泣きたい。今すぐ泣くのも恥ずかしい。
(お母さんに教えたい)→ 僕は〇〇を我慢したよ。悔しい時も我慢した。蹴られて痛かった。
つまり、何かを我慢して泣きたいのも我慢してきて、安心した途端、泣きたいが素直には泣けず混乱…というのが、息子の気持ちに近い気がしました。
息子の気持ちの中核としては、「泣きたい」のかなと。
冒頭で、息子の「わざと怒られる行動」はいわゆる愛着障害の「試し行動」とはちょっと違う…という話をしたのは、こういうところからでもあります。
だから息子の「わざと怒られる行動」は、親を「困らせたい」自分に「構って欲しい」ではなくて、自分が「泣きたい」だから親に「怒られたい」に繋がっているのかな、と思いました。
怒られたい理由は「泣きたい」?
実際には、わざと怒られる行動をする時の子供の気持ちは、綺麗にまとめられるほど単純ではないと思いますが、ざっくり把握すると息子の場合は「泣きたい」という気持ちなんだな…と理解しました。
色々なことを子供なりに我慢して、安心できる親の顔を見た時、子供自身もよく分からない思いで頭の中がぐちゃぐちゃ。
一度にたくさんの想いを順序良く考えられないから、自分の思考回路を整理できていない。
簡単に表現すると「泣きたい」。
5歳当時の息子は、
- 嫌だけど我慢して頑張った保育園。
- 色んなことを(自分なりに)我慢した。
というベースがあって、
- お母さんの顔をみたら安堵した。
- 我慢したことがこみ上げてくる。
- ワーっと泣きたい。
という保育園のお迎え時に、
- 保育園は嫌でも、ブロック遊びは楽しい。
- 帰りたいけど、ブロック遊びも続けたい。
- 作り途中のブロックを完成したい。
- でもお母さんが迎えに来ちゃった。
という、あんなに待ち望んだお母さんのお迎えなのに、相反する気持ちも混ざっていることが理解できず、混乱。
そういう複雑な気持ちが整理できずに、プチパニック状態だったのかもしれません。
複雑な気持ちが表現できない!泣きたいから怒られる!?
そういう「泣きたい気持ち」のところに、「お母さんに怒られる」というトリガーがあれば、よく分からなくてもとりあえずワーッと泣くことができます。
だから、泣くきっかけを求める気持ちもあって、「怒られたい」という心理が同時に働いているのかな、と思いました。
我慢できたことを私に報告したい嬉しい気持ちもあるし、安堵感から涙も出る。
そんな複雑な心情は、まだ5歳の息子に整理できるわけもなく、我慢せずに悪い事をすれば怒られることだけは分かっているから、辿り着いた行動が「わざと怒られる行動」であり、「怒られて泣く」という結果だったのかもしれません。
子供の「わざと怒られる行動」には、自分では対処できない複雑な気持ちが絡んでいました。
どんな時に、子供が「わざと怒られる行動」をすることが多いのか絞り込むことで、息子の行動の謎に迫ることができました。
理由が見えてきても、親や保育士さんを困らせる行動であることには変りないので、何らかの対処をしなければいけないと思いました。
「わざと怒られる行動」で頭ごなしに叱ると逆効果!
私は、息子の行動(の本質)がなかなか理解できなかった頃、その行動自体をすぐに怒っていました。
例えばわざと「ブロックを投げたこと」に対して、その場で言い聞かせようと必死ですぐに叱っていました。
でも、悪いことだと分かっているのにやってしまった事に対して頭ごなしに叱ると、癇癪が悪化して感情コントロールが効かなくなりました。
何も見えず何も考えられず「お友達のブロック作品を壊しに行く」という最悪の事態も経験しました。
「ブロックを投げたらダメ」と知っているし、投げたら怒られることも本人が一番分かっている。ここで百も承知の「ブロックを投げたこと」自体に対して、一発目で正論で叱っても全く逆効果でした。
息子の「わざと怒られる行動」の対処法として一番ダメだったのが、「頭ごなしに叱る」でした…。
「わざと怒られる行動」の対処法1.複雑な気持ちを代弁
息子の「わざと怒られる行動」の対処法で、一番効果があった方法は、在り来りですが「代弁」です。
5歳の子が自分では表現できない、複雑な気持ちを抱えていることが解ったので、複雑に絡み合う気持ちをとにかく代弁しました。
予想できる子供の気持ちを、優しい口調で言ってみます。
「保育園、嫌だったのに我慢できたね」
「みんなと一緒に〇〇できて、偉かったね」
「ブロック、まだ遊びたいね」
「ブロック完成したかったね」
「お母さんが来たから嬉しいね」
「お母さんが来て嬉しいけど、ブロックもまだやりたいから困っちゃうね」
「帰りたいけど帰りたくないね」
「どうしたらいいか分からないね」
「本当は帰らなきゃって分かっているけど、遊びたい気持ちもあるから、モヤモヤしちゃうね」
想像できる息子の頭の中・心の中・複雑な気持ちを、息子の代わりに言葉にしていきました。
代弁の効果
そうすると、モヤモヤと絡み合ってパニックになっていた気持ちが、整理できるようです。
私が言語化した気持ちの中で、当てはまる気持ち、もしくは似ている気持ちがあると、息子は「うん」とうなずいていました。
自分では表現できなかった気持ちが言語化されたことで、2~3種類の気持ちに整理できるようでした。
息子の複雑な気持ちを代弁すると、「お母さんが迎えにきたから嬉しい」「まだブロックで遊びたい」「〇〇だからモヤモヤする」…だいたいこの3種類が当てはまりました。
「わざと怒られる行動」の対処法2.愛情を言葉と態度で伝える
息子がわざと怒られる行動をした時に、息子なりの理由や複雑な気持ちがあるにせよ、怒られると分かっているのにやってしまった罪悪感も感じているようでした。
特に息子の場合は、極端な思考回路の持ち主。物事を「0か10」「1か100」くらいのレベルで考えてしまうので、「こんなことしたから、お母さんは僕のことを嫌いになったかもしれない」とすぐに考えてしまいます。
私が叱咤や注意をする時、息子の人格や全てを否定しているわけではなく、息子の言動をピンポイントで指摘しているのに、まだ幼い息子には言わなければ伝わりません。
それは普段から「僕はもう嫌われた」「僕は死んだ方が良いんだ」など、すぐ極端にいじける姿からも分かります。
だから、息子の気持ちを代弁するのと並行して、私の気持ちを言って変わらぬ愛情を言葉で伝えました。
「お母さんは、〇〇に会えて嬉しい」
「お母さんは疲れたけど、急いで来たよ」
「お母さんは、〇〇が大好き」
「〇〇がブロックを投げても、〇〇のことが大好き」
「大好きな気持ちは、何があっても変わらない」
私の言葉に耳を傾けているタイミングで、息子は私の膝に座ってくることが多いので、ギュッと抱きしめると安心して落ち着いていました。
「わざと怒られる行動」が目立った5歳(まとめ)
息子が「わざと怒られる行動」をした時に、息子が自分では言語化できない複雑な気持ちを代弁し続けました。
気持ちを探るゲームのようでしたが、ドンピシャで当たる確率が増えて来ました。
代弁が「当たる」と息子も嬉しそうで、大きなため息をついてから「お母さん、大好き」と言い、保育園から帰る態勢になってくれる日が増えました。
「自分のぐちゃぐちゃだった心の中を分かってくれた」という安心感もあるようです。
結果的に「わざと怒られる行動」にまで発展しない日が増えて、良い循環が生まれました。
私が代弁する言葉がいつもだいたい同じ内容だと、息子自身もその表現を覚え、自分で言語化できるようになったのが大きいと思います。
「まだ遊びたい」「ブロックの赤が見つからなくてイライラする」等、自分で言葉できることで、グチャグチャだった気持ちが整理でき、情緒の安定に繋がっていると感じます。
とはいえ、一筋縄ではいかず「わざと怒られる行動」は軽減しても、保育園からなかなか帰ろうとしてくれない日も多々あります。
だけど、目先で起こった「怒られる行動」そのものを一発目で叱っても悪化する、と改めて気が付けたことは、今後の対処法としても糧(技)になります。
今回は、(いわゆる)試し行動とは違うんだ!この「わざと」は何だろう?何か独自の理由があるはず…と子供を理解しようと考え続けたことで、良い方向に進みました。
今後も、息子の「謎の行動」について分析を続けていきたいです。
就学に向けて準備も始まります。