息子が4歳の頃、ドアが閉まる音にとても敏感でした。
赤ちゃんの時から小さな音に敏感だったので、聴覚過敏の傾向もあるのだと思います。
全ての音ではなく、特定の音だけに過敏に反応するわけですが、不自然なほど怖がる姿に違和感を覚えた「特定の音」が、ドアの閉まる音(以下「ドアの音」)でした。
※後に「ASD(自閉症スペクトラム)」の診断(意見書)をもらって療育に通うことになりますが、この頃はいわゆる”発達障害グレーゾーン”的な位置付けでした。
音に驚く気持ちと精神的ショックが重なり、特定の音(≒トラウマ)に…
前段の「風船の割れる音」に敏感だったエピソードの通り、息子にとって「特定の音」になってしまうきっかけは、音と同時に精神的ショックを受けた時でした。
バンっ!という短い破裂音に驚いた気持ち + 大切な何かがなくなった気持ち…など、音と精神的ショックが重なった時に、それがトラウマになっている感じに似ていました。
息子が怖がる「ドアの音」について、その路線で考えてみると確かに身に覚えがあり、原因は私かもしれないと気付き、自分を呪いました。
後に、療育施設長(兼 小児科医)の先生から「こういう子に対してむやみやたらに怒っちゃダメ」と教えてもらったのですが、この頃の私は超未熟でイライラすることも多く、息子に対して怒鳴ってしまうことがありました。
怒れば怒るほど癇癪が悪化し、情緒不安定になるタイプの息子に対して、「怒鳴りながらドアをバタンと閉める」という行為をしてしまったんです。
怒りに任せてドアを閉めた!大きな音と恐怖感
母子分離不安の影響もあるのか、(極度に)お母さん大好きな息子にとっては、私が怒ること自体が大きなショックです。
息子は、私が怒鳴ると大泣きして収拾が付かなくなります。だから普段、怒鳴るのは限界まで我慢しています。
私が怒鳴るということは、我慢の限界を超えたという意味なので、その怒鳴り声は非常に大きな声です。
そういうのを色々分かっているのに、イライラして我慢できず、怒鳴るだけでなく罵声に加えて、ドアをバン!と勢いよく閉めてしまいました。
当然、息子にとっては大きなショックで、この時に味わった感覚が、息子にとっては「怖い」「二度と聞きたくない」「鳴ったらどうしよう」という不安に転化してしまった気がします。
【原因1】怒りに任せてドアを閉めて拒絶&無視
私の記憶にあるだけでも、ドアの音を怖がる原因になったと思うことが2回あります。
1回目は、ひどく怒鳴った後に、トイレのドアをすごい勢いで閉めました。
息子が産まれてから、私は(何かあった時のために)自宅トイレの鍵は閉めずに入る習慣だったのですが、この時はトイレの鍵を閉めて中に籠りました。
息子は泣きながら、トイレのドアをガチャガチャやって、「お母さん!お母さん!」と叫びながらドアを開けようとしていました。
私はそれを拒絶、暫く無視して黙っていました。
【原因2】ドアの鍵を閉めて「違うお母さんに来てもらう」と言い放った
2回目も、ひどく怒鳴った後に、寝室のドアをすごい勢いで閉めました。
「もう無理!違うお母さんに来てもらうから!」と怒鳴り、寝室のドアをバタン!と勢いよく閉めて鍵をかけ、暫く寝室に籠って一人で泣いていました。(←私が)
ドアの向こうの息子から見れば、拒絶された気持ちでショックだったと思います。
お母さんが大好きな気持ちを知っているのに、息子が一番嫌がることを言ってしまった。
息子は泣きながら、寝室のドアをガチャガチャやって、「お母さんがいい!違うお母さん来なくていい!」と叫びながら、ドアを開けようとしていました。
発達障害(ASD)の特性を理解し始めた頃…焦りと不安が影響
この頃、発達障害の特徴や対処方法について、素人なりに勉強・理解し始めたつもりなのに、時間通りに約束通りに行動できない息子の言動に対して、すごくイライラしてしまうことがありました。
(普通の育児書じゃなくて発達障害系の)マニュアル通り試しても、何度も約束しても、決めた時間にお風呂に来てくれないとか図鑑を読むのをやめてくれない等の理由で、ブチ切れていました。
息子の「できないこと」だけが理由ではなく、「このままだと学区の公立小学校に行けないかも」「施設で訓練しないとダメなの?」など将来的な漠然とした不安に煽られて、日常の育児ひとコマひとコマに焦りと不安がありました。
怒鳴ってはいけない!こんな育児法は逆効果だ!…と頭では理解できても、まだまだ自分がアンガーコントロールできずに未熟でした。
結果、立て続けに、怒りに駆られてドアをバン!と閉めて、息子が怖がる行為をしてしまいました。
単なるドアの「音」じゃない、嫌で怖い「記憶」に
あの時の息子にとって、私が怒りに任せて閉めた「ドアの音」は、きっと単なる音ではないはず。
私から拒絶されたようなショックと共に、嫌な音・怖い音として記憶に残ってしまったのだと思います。
締め出されるような、遮断されたような、怖い音。大好きなお母さんが自分を嫌いになったかもしれない音…。
こうして「ドアの音」は、嫌な音・怖い音というイメージを引きずりながら、感覚過敏な子が敏感に反応してしまう「特定の音」になっちゃったのかなと思っています。
ドアの開閉前に耳を塞ぐ、嫌がる怖がる
その頃から、今まで大丈夫だった「ドアの音」に、敏感に反応するようになりました。
「風船の割れる音」を怖がる時と同じで、実際の音が聞こえる時ではなく、聞こえそうな時や聞こえる前に耳を塞いで怖がりました。
ドアを開ける時に、「そのドアは嫌だな」という表情で立ち止まり、耳を塞いでドアを見つめる。
私がドアを開けると、耳を塞いだままドアを通る…という感じでした。
耳を塞いだまま、ドアが閉まるのを見届けないと気が済まない
ドアが閉まる時は、耳を塞いだままドアから10mくらい離れた所まで逃げました。
そして、耳を塞いだまま振り向いて、ドアが閉まる様子を見届けてから、その場を去っていました。
怖いからと言って、自分が見ていない所でドアの音が鳴るのは、余計に不安だったようです。
ドアが問題なく閉まったのを見届けないと気が済まない感じでした。
息子は、私が静かにドアを閉める様子を、耳を塞いだまま遠くから見ている、という感じでした。
特に苦手だったドアの種類は…
息子が一番苦手だったのは言うまでもなく、ドアノブから手を離すとバタン!と音を立てて閉まるタイプでした。
上部にドアを押さえるアームのような「ドアクローザー」が付いている種類のドアで、ドアが大きく開いた状態で手を離してしまうと、閉まる時に大きな音が鳴ります。
息子と一緒の時は、最後までドアノブを持ってドアを閉め、大きな音が鳴らないようにしていました。
しかし、前方を行く人がドアノブから手を離してしまうと、目の前でバタン!と鳴ってしまうので、私は閉まりかけたドアを押さえようと必死に走り出しますが、間に合わない時もありました。
息子はどのドアが大きな音なのか知っているため、例え私がドアノブを押さえている時でも、耳を塞いでドアを遠目に「あっあっあっ(怖)!」とプチパニックになっていました。
【対処方法1】ドアノブを持って閉めれば音は小さい…論と証明
息子がこのままドアを開け閉めできない人になってしまう前に、なんとか「ドアの音」恐怖症を克服しなければと、私も必死でした。
日常生活でドアを使う時に、これ以上ドアがトラウマにならないように、とにかく静かに閉めて安心させることを徹底しつつ、恐怖心を軽減する努力もしました。
対策の1つが、ドアに近づくよりも前に「ドアノブを持ったまま閉るから音が出ないよ」と言葉で教えることです。
次に、「持ったまま」「持ったまま」「持ったまま」「パタン」を合言葉に、閉める時のドアの動きに合わせて一緒に言いました。
ドアを開けた時に「持ったまま」、閉めてる途中に「持ったまま」、閉まる直前に「持ったまま」、ドアが閉まった瞬間に「パタン」、と言います。
ドアノブは、ドアを閉め終わるまで必ず押さえ続け、本当にドアの音がしなかったり、音が小さかった時は、「ほら、大丈夫だったね」と伝えました。
◎ドアノブを持ったまま説明した効果
これには効果があり、息子のドアに対する恐怖心がだいぶ和らぎました。
大きな音が出るかもしれないと不安だったところ、実際には音が出ずにホっと一安心した場面で、安心を再確認するように「大丈夫だったね」と言葉で明確に言って、安心感を一押しするのが効果覿面だった感があります。
私がドアを開ける前に、息子が自分から「持ったまま閉めてね」と言えるようになりました。
静かにドアが閉まるまで、耳を塞ぎながら遠くから見届けないと気がすまかったのに、ドアが閉まる前に安心して、その場を立ち去れるようになりました。
【対処方法2】どんな音が鳴るのか、ドアの音の種類を予告する
それから息子の場合、不安なことに対して、事前説明や心構えにより、その程度や刺激具合が変わってきます。
なので、ドアと向き合う前に、息子の心の準備ができるように、どのドアがどんな音を出すのか、具体的に予告するようにしました。
「このドアは、ドアノブを持たないとバッタン!って大きな音がするよ。」
「そのドアは、ドアノブを持たなくても、カチャって小さな音だよ。」
「このドアは、閉めてる途中からキーってうるさくて、最後にキーバタン!って鳴るよ」
という感じです。
◎どんなドアの音か予告した効果
息子はいつも、少し離れた場所で耳をふさぎながらドアが閉まるのを見届けていましたが、耳を塞ぎながらも耳を澄ましているので、ドアの閉まる音は聞こえています。
私が予告した通りの「ドアの音」を聞くと、安心した表情をするようになりました。
予告通りの「ドアの音」を聞くと、耳から手を外してニコっと笑い、ドアに背を向けてスキップしていました。
【対処方法3】なぜ音がするのか、ドアの仕組みを具体的に教える
もう1つ有効だった対処方法は、ドアの仕組みを教えることです。
ドアを開ける時/閉める時に、なぜ音が鳴るのか。大きくドアを開けた所から手を話すと、なぜ大きな音が出るのか…など、具体的に説明しました。
実際のドアの部品部分を指をさして、
・ドアの上にある部品が、閉まる時にドアを押さえくれている
・ドアの重さで自然にだんだん閉まる
・この時に、あの部品がキーキー鳴ることがある。
・この部品が凹む時にカチャって鳴る。(指でカチャカチャ押しながら)
など。
◎ドアの仕組みを教えた効果
私がドア実物を見本にして説明すると、息子は何となくドアの仕組みを理解したようです。
「ドアにはね、この部品が付いているんだよ、お父さん。」と夫の手を引きながら、家中のドアに案内して、ドアクローザーを指さして教えていました。
ドアを見た時に耳を塞がず、ドアの前で立ち止まり、ドアクローザーの部品部分を眺めていることも増えました。
ASDと聴覚過敏、「特定の音」の苦手対策まとめ
発達障害の特性や診断の有無はさておき、感覚に敏感な人はたくさんいるし、人によってレベルも症状の出方も様々です。
息子の場合は、母子分離不安や不安が強いとか、こだわりが強くて一度気になると気になって仕方がないとか、原因や先行きが分からないと心配で仕方ないとか…そういう色々な特性が影響し合って、苦手な感覚・今回で言うと「ドアの音が怖い」という感覚として現れるんだと思います。
息子の聴覚過敏だと、一般的に耐えがたい「ガラスや食器を引っ掻く音」はなぜか平気なのに、風の音やドアの音には敏感に反応する…という具合です。
息子は仕組みを理解することで、漠然とした不安が軽減して、過敏さが緩和する傾向があります。
今回の「ドアの音」では、丁寧に説明して仕組みを知ったことで安心に繋がり、苦手意識や恐怖心が軽減したことは事実です。
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