保育園に息子を迎えに行くと、まだ園庭で遊んでいる最中でした。
息子は、私が来たことに気が付いていない。
私が息子に近づくと、そこで繰り広げられていたのは、ASD同士の”こだわり”がぶつかり合ったやり取りでした…。
倒した竹馬で囲った基地を作りたい!遊びたいASD息子の”こだわり”
軽度ASD(自閉症スペクトラム障害)、こだわりの強い息子は、園庭のフェンスと竹馬をうまく使って、基地を作っていました。
フェンスに竹馬を立てかけたり、横に倒して地面に並べたり。フェンスと竹馬で囲まれたエリアに、自分が入れば大満足、というシーンでした。
ところが、その竹馬を並べては、すぐに取り外しに来るTくんが!
同じクラスで、同じASDのTくんです。
基地を作っては、基地の壁(=竹馬)を外され、息子は半ばパニック。
息子が竹馬を地面に置くと、すぐにTくんがそれを取って持って行く。息子がTくんを追いかけ、Tくんが置いた竹馬を取り返す。
私が園庭を歩きながら、息子のところへ到着するまで、そんな”やりとり”が3回ほど繰り広げられていました。
園庭半ばで、息子がパニックになって、喚きだしているのが分かりました。
これ以上、あの二人だけで遊んでいると、どちらかが竹馬を振り回しそうで怖い!!
そこから私も、園庭をダッシュ。ASD児二人のところにたどり着きました。
私が来たことに気が付いた息子は、我に返り「お母さん、見てて!」と言いました。
息子は、フェンスと竹馬で囲んだ基地の中に、自分が入っているところを私に見せたくてたまりません。
Tくんが片付けた竹馬を再び取りに行き、フェンスと竹馬で基地を作りました。
竹馬を立てて並べたい!片付けたいASDお友達の”こだわり”
ところが、再びTくんがやってきて、基地の壁として使っていた竹馬をどんどん取り外しました。
なるほど、息子がプチパニックを起こすわけだ・・・。
私は、Tくんに「使っているから、まだ片付けなくて大丈夫」という内容を伝えました。
すると、
「こっち!並べるの!!」
という返事が返ってきました。
なるほど、Tくんは竹馬置き場に、竹馬を全部立てて並べて、片付けたかったのです。
自分が片付けたいタイミングで、きれいに並べたい”こだわり”。
私には、Tくんの”こだわり”も理解できました。
しつこい方が勝ち?根気負け、八つ当たり、感情コントロールできないとトラブルに
フェンスと竹馬で作った基地の中に、私と一緒に入りたかったらしい。
息子が「お母さんも一緒に入って!」と言った途端、Tくんが基地の一辺(横にして地面に置いておいた竹馬)を持って行ってしまいました。
息子は念願叶わず、地団太を踏み、癇癪スイッチが入ってしまった。
「ん!」「ん!」と言いながら、園庭の地面を蹴飛ばし始めました。
「大丈夫だよ。もう一回作ったら、お母さんと一緒に基地に入ろう。」
となだめた所に、Tくんがもう1つの壁(=竹馬)を片付けようと、”息子の基地”に入ってきた。
これには息子も我慢できず、園庭に落ちていたビニール破片を拾い、Tくんに向かって投げた。
ビニール破片には、園庭の砂が付いていたので、Tくんに砂がかかってしまった。
ここでTくんは、叫びながらどこかへ行ってしまいました。
”こだわり”同士がぶつかり合い、しつこくやり続けた方が平然とし、根気負けした方が泣いたり癇癪を起こしたりする結果になるのも腑に落ちない。
でも、感情のコントロール(≒我慢)できずに、人やモノに八つ当たりしたり、物を投げたりすると、「他害」に繋がる要素を伴う。
こうやってトラブルに発展するのだと、目の前で繰り広げられた”ケンカ”のような一幕が、ズシンと突き刺さりました。
”こだわり”ゆえに怒るは禁物、今回の解決方法
私は、壁がなくなった基地を見ながら、息子に共感を示す声掛けをしました。
息子は、Tくんがいなくなった竹馬置き場から、再び竹馬を取り出し、基地を再生しました。
そして完成した基地に、私を招待しました。
私が基地に入ってしゃがむと、息子は私の足に腰を掛けて来ました。少しバツが悪そうな顔をしていました。
私が聞くと、息子は無言で、首を振りました。
お互い、謝ることが1つずつある-。
ということは、納得した様子の息子でしたが、自分よりも先に謝るべきはTくんである、と思っていることが分かりました。
そう言い聞かせて、Tくんを探しました。
担任の先生にも事情を話し、私は息子が謝るのをフォローするので、先生にはTくん側のフォローをお願いしました。
Tくん:「並べたかったの!」
先生:「ゆきまる君が、まだ遊んでいる道具を片付けるのはダメだよね。嫌だって言っているのに、やっちゃダメだよね。」
先生が何度も言い聞かせる中、(納得しているかどうかは分からなかったけど)Tくんが「片付けてごめんね」と言えました。
息子も、Tくんに「ビニール投げて、ごめんね」と言えました。
「砂もかかったよ!」というTくんの反論には、私が「砂もかかっちゃって、ごめんね」と謝りながら、Tくんの洋服を軽くはたきました。
お互いの”こだわり”。
ASDの特徴ゆえに発生した今回の事件は、お互いに謝ることで解決しました。
これは単なるケンカじゃない…一部始終を見ていなかったら?親にとっても重要課題
今回の”ケンカ”は、私にとってズッシリと重くのしかかりました。
これは単なる”ケンカ”じゃない。
もしも私が、一部始終を見ていなかったら?
経緯を知らなかったら?
砂の付いたビニールではなく、ケガをするような固いものを投げていたら?
どちらかが竹馬を振り回して、どちらかがケガをさせてしまったら?
同じようなことは、小学校に行けば、もっと多発するだろう。
支援学級の中でなら、大いにあり得るシチュエーションだろう。
まだ答えも対策もない、重要課題を突き付けられた事件でした。