息子が通った保育園では、3歳児クラス以降、夏季シーズンになると水筒を持参しました。
3歳児クラスに進級した時、困りごとの1つが、その「水筒」。
なんと、息子は水筒を開けて飲んで閉める…という一連の動作が、上手にできませんでした。
保育園児(後半3年間)は自分で水筒を扱う
息子は入園当時から、大麦・麦茶アレルギー対策として、水筒(水かお茶類)を持参していました。
この時の水筒は「マグタイプ」で、先生が水筒の蓋を開け、プラスチック製のコップに注いでくれていました。
状況が一転するのは、3歳児クラス進級後。
暑い日が多くなる春から夏場にかけての水分補給は、保育園が用意する麦茶の量では足りないため、園から水筒を持ってくるように説明がありました。
その結果、今まで水筒持参の子は息子だけだったのに、ほとんどの子が水筒を持ってくる毎日に変化。
3歳児クラス(幼稚園で言うと年少クラス)以降、水筒は自分で開けて飲んで閉める、という状況が当たり前になったのです。
水分補給用に持参する水筒は、園庭で遊ぶ時や教室移動の度に持ち歩き、必要な時に自分で水分補給をします。
水分補給タイムや喉がかわいた時に、自分で水筒置き場に行き、自分で水筒を開け、自分で飲んで、自分で蓋を閉めて、水筒置き場に戻します。
【問題1】水筒は直飲みタイプ・蓋はワンタッチオープンなのに開かない!
水筒は自分で扱えるように、自分で飲めるようにすればいいのね!
状況を事前に察知した私は、息子が一人で水筒を簡単に開けられるように、ワンタッチオープン式の直飲み水筒を買いました。
息子に買ったのは、スケーターのプラレールの水筒です。
スライド式のロックを「ずらす」という作業がワンステップ必要ですが、ロックを解除した後は、ワンプッシュで蓋が開く便利なスポーツタイプです。
開口ボタンをカチっと押すだけで、水筒の蓋がパカっと開きます。
それなのに・・・。
息子は「あれ!?」と首をかしげ、「んー!んー!」と踏ん張るだけで、一向にワンタッチオープンできませんでした。
「できない」「開かない」と言うばかりで、一向に水筒の蓋を開けられませんでした。
「押すだけ」がなぜ出来ない!?まずは観察
こういう困り事や難しさが、「感覚統合」の問題と関連付けて考えられるようになったのは、もう少し後のことです。
この時はとにかく、なぜ出来ないのか!?と必死に考え、一連の作業の中から1つ1つの「できない動作」を見極めようと観察しました。
違和感を覚えた一動作について、言葉で説明したり、お手本を見せたり、実演したり。本人の手を持って一緒にやって感覚を覚えさせたり。
息子の動作を丹念に見ながら、自分の場合はどうやっているか考えました。
「力の入れ具合」と「タイミング」合わせを練習
そうすると、ただの「押す」という動作でも、力の入れ具合やタイミングは説明しないと(教えないと)分からないんだ!と感じました。
自然に覚えるには人より時間がかかるから、人と同じ時期にできるようになるためには、事細かに仕組みや原理をわざわざ説明する必要がある。と言った方が正解に近いかも。
自然に覚えるのを待っていると、皆ができるタイミングで「できない」という結果になってしまうので、集団生活を過ごす上では、あえて練習が必要でした。
水筒のワンプッシュボタンを「押す」という動作で言うと、どれくらいの力で押すのか、どこで押すのを辞めるのか、教える必要がありました。
水筒の蓋を開ける動作は、息子の指先を上から押して、ワンプッシュボタンを「押す」という感覚を実際に教えました。
同じように、水筒の蓋を閉めて、手のひらで上から「押して」、カチっと鳴るまで「押す」という閉める動作も、息子の手に私の手を添えながら感覚を教えました。
そして、水筒の「蓋を開ける」と「飲む」作業は切り分けて考え、それぞれを練習する必要がありました。
【問題2】飲む時にダラダラこぼす!
この「水筒の開閉」よりも難しかったのが、「飲む」動作です!
飲み口を口に当てて、水筒を傾けると、口に入る前に、顎から滝のように流れてこぼれました。
どれくらいの角度で傾ければ、丁度良い量が丁度いいスピードで口に入ってくるのか、想像できないらしい。
水筒の中身は見えないので、どうすれば中身が丁度よく出て来るのか分からないようでした。
水筒の中は見えない!「感覚の世界」をスモールステップ化
確かに、水筒の中身は見えないから、感覚に頼るしかない。
この感覚は、経験と予想でだいたい把握できるものだけど、息子にとってはそうじゃない。
・水筒を両手で持つ
・水筒を少しずつ傾ける
・口に水が到着したら、傾けストップ
・少しずつ口の中に水を入れる
水筒の中身が口に到達するまでの流れをスモールステップに分け、1つ1つのステップについて、実際にやりながら説明しました。
失敗が続くと、洋服や床がビショビショに濡れます。
息子のように、こぼし具合が「滝」のようにひどいなら、お風呂の時に浴室で練習するのがお勧めです。
【問題3】飲んでいる途中で重たくてグラグラし始める
上の”スモールステップ”の先頭に、「水筒を両手で持つ」があります。
これを練習する意味が分からない方もいらっしゃると思いますが、息子の場合はこれがけっこう大変でした。
満タンに入れた水筒を両手で持ち、飲み口を口に当てて、水筒が横になった状態をキープするのが難しいのです。
満タンの水筒はけっこう重い。これを斜め掛けではなく、水筒のボディを鷲掴みにして、自分の両腕を上げた時、思いのほか腕の筋肉を使います。
水筒を飲むポーズをとると、重たくて水筒がグラグラし始めました。
中身を出しながら水筒を傾けていくので、途中で腕が疲れて、飲んでいる最中にフラフラしました。
「少しずつ傾ける」という感覚も難しいので、「ゆっくりゆっくり」「坂道にして」「お水がすべり台を降りて行く~」など、実際の動きに合わせて声掛けも工夫しました。
水筒を傾けて、中身が出て来るイメージが沸くように、何度も練習しました。
力加減・中身の想像・実際の筋力…「水筒で飲む」にはたくさんの感覚が集結
手の動き、口の感触、水筒を支える腕の力、実際に飲む…。
「水筒で飲む」という動作は、とても沢山の感覚を統合した動作でした。
課題は続く…水筒のコップ飲み
4歳になると、「コップ付きの水筒がいい」と言い出したことがあります。
その時は、「自分でコップに注ぐ」という練習が必要でした。
感覚統合をヒントにすると
今思えば、『水筒の練習』は、結果的に「感覚統合の問題」を意識して対処できた気がします。
何か「できないこと」があった時に、それが「たくさんの感覚を使う動作」だということに気が付けると、息子ができない理由を理解したり、解決の糸口が見つかったりしました。
私が「感覚統合」の発達に関する本を読んだ時は、分厚くて難しい書籍が多かったのですが、最近では分かりやすくコツや対策が紹介された本がたくさんあります。
どうして「こんな簡単な動作」なのにできないんだろう?…と思った時は、感覚統合をヒントにできない動作に注目してみてはいかがでしょう。
できるようになる「きっかけ」が見つかるかもしれません。
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