息子は、赤ちゃんの頃から寝ない子、すぐ起きる子、すぐ泣く子。幼児期は1種類の虫や花に固執して、こだわりが強い子でした。
音・感触・こちらの感情に敏感で、良く言えば「繊細」、悪く言えば「扱いにくい」。特徴を調べると「育てにくい子」「気になる子」という表現に当てはまりました。
しかし、いわゆる発達障害とは全く別のものだと思っていたのです。
息子の特性に本気で向き合い対処する生活は、その特徴を保育園で指摘された時から本格的に始まりました。
保育園から「発達障害かも」と指摘された時の気持ち
当時、息子は4歳(3歳児クラス)。行動が遅い子で、気持ちの切り替えも苦手なので、いつも集団行動からは遅れがちでした。
それでも、いざと言う時のイベントや行事では、持ち前の本番強さを発揮し、他の子と負けず劣らずの結果を出していました。
だから、この後ご紹介する保育園からの指摘は、予想外というか驚きました。
今まで指摘されてきたように、朝が遅いとか着替えが遅いとか、そういう行動に関する指摘を受けると想像していたからです。
「発達障害」という単語は出ませんでしたが、いわゆる発達障害の主な特徴に当てはまるような特性を挙げられ、実質「発達障害なのでは?」と遠回しに指摘されました。
この時、私の気持ちは、ショックより驚き。驚きより怒りでした。
最初はとにかく、腹が立ちました。
なぜ保育園からの指摘に腹が立ったのか?
保育園側から、まるで「発達障害かもしれない」という意味の指摘に対して、ショックよりも怒りがこみ上げたのは、なぜだろう?
それは、この時の私は、息子が何かをできない事実よりも、息子への指示の方法や説明の仕方が悪いんだと思っていたからです。
親は、子供が苦手なことや出来ないことを察して、「できるように」「上手になるように」と毎日工夫と努力を続けています。
私も家庭では、伝わりやすい言い回しを選び、息子が分かるように説明し、少しでも出来れば褒めて、他の子より遅くても少しずつ色々なことが出来るようになっていました。
それなのに、何も知らない他人が「できないこと」だけに着目して、いとも簡単に「できない」と指摘してくるから腹が立ちました。
特に幼児時代は発達や成長に差があるのに、簡単な指示だけ出して、すぐに行動できないからという理由で、「言っていることが伝わらない」と指摘されるのは何か違うと思うし、「そっちの言い方が悪いんでしょ!」という思考回路に繋がりました。
しかし、「うちの子は発達障害なのかもしれない」と受け止めたことで、物事が好転し始めたのも同時期でした。
今回の指摘を受けた後、息子が何かを出来ていない時の状況を冷静に見極めて、謎の行動の理由を探るようになりました。私自身が、改善策を本気で考えるようになった結果が、後の「療育」に繋がります。
それでは、保育園から「発達障害かもしれない」と指摘を受けた場面を振り返り、当時の息子の特徴をまとめていきたいと思います。
保育園で「気になる子」の心配事と「育てにくい子」の困り事が食い違う
息子が通う保育園では、年に一度、「保育参加」という行事があります。保育園で過ごす様子を観察しながら、保護者が午前中の保育生活を体験するイベントです。
最後に個室で「保護者面談」があります。
今回で3回目。3歳児クラス(幼稚園でいう年少クラス)の保護者面談の時に、「普段、何か気になることはないですか?」と、主任が突然、話を振ってきました。
息子は、小麦・乳・ゴマ・ナッツ類のアレルギーがあります。この時、私にとって、保育園における一番の心配ごとは、食物アレルギー問題でした。
保育園を行く朝は嫌がって大変ですが、保育園に行ってしまえば楽しく過ごしているように見えたからです。
保育園に行く前の「朝の身支度」も非常に大変ですが、それは保育園に限った問題ではなく、出掛ける日の日常だったからです。
急ぐのが苦手な子・ゆっくりした子で、いつも皆より行動が遅いですが、3歳くらいの子が皆、時計を見ながらテキパキ動ける子供ばかりでない、という想いがあったからです。
だから、「気になること」への回答は、日常生活の困り事というよりも、給食時の席・給食当番・食育活動・小麦ねんど作りなど、食物アレルギーに関する保育園での心配事について、一気に述べました。
すると、アレルギーに関する心配事に対しては、1つ1つ流れるように即行で返事をされました。「XX当番は、配慮するので大丈夫です」「〇〇は、今度確認しますね」と、次々に淡々と。
しかし、その後、すぐに「食物アレルギー以外で困っていることはないか?」と切り出されたのです。
これで、ピンと来ました。
先生は、食物アレルギー問題ではなく、何か違うことを問題視しているんだ!
私が心配していることと、保育園側が心配していること(問題視していること)が、違うんだ!
先生から見て、問題は食物アレルギーじゃない。集団生活の中で、何か問題があると思われているんだ!
何を根拠にして問題視されているかは分かりませんが、息子が何か、保育園生活で問題があるのだと察しました。
できる/できないの問題じゃない!?専門機関の受診を勧められる
それでは、どんな問題があるのか?
お友達とケンカしちゃうの?
行動が遅いの?
お昼寝で寝ない?
すぐ泣く?
次の説明で、もっと具体的に、息子が他の子と比べて出来ていない行動を教えてくれるのかと思いました。
ところが、この時の面談を仕切っていた主任は、突然の「専門機関行き」を推奨してきたのです。
固まりました。
専門機関?何それ?どこそれ??
思考がぐるぐるして、無言のまま、頭の中がパニック状態だったと思います。
しかし、「息子は普通じゃない」という事を、遠回しに言われたのだ、と認識できました。
だけど、反発したい複雑な気持ちもありました。
この時の担任は、男の子より女の子を可愛がり、できる子には優しく、できない子には厳しい先生。息子と相性が合わないのは一目瞭然。息子ができないと、先生がすぐに怒鳴り、息子がうまく指示に従えないだけでしょう!…という想いも混ざり、すぐに言葉を返すことができませんでした。
だけど、「専門機関で診てもらえ」と言って来るということは、そういうレベルの問題ではないのかもしれない。
私は予想外の驚きの指摘に、すぐに相槌を打つこともできませんでした。
言葉が出てこない私に気が付いている主任が、担任の先生に目配せで合図。担任の先生の腕を、横から肘で突いて、何かを発言するように促しました。
保育園から指摘された特徴1.オウム返し?質問を反復する
担任の先生が、息子の「気になること」を話し始めました。
その1つ目が、「質問を反復する」。
そんなバカな!と思いました。
自宅では、質問した事を理解して、正しく回答します。質問を理解できずに、オウム返しなんて、するわけない!
息子は、担任の先生がずっと怖くて、前から「怖いからイヤだ。」と言っていました。
だから、怒りながら質問されると、萎縮してしまって、何も考えられなくなり、質問が耳に入らない。とりあえず怖いから、よく分からないけど『言われたこと』をそのまま返しているだけだ、と思いました。
「絵を描いて」と言われて『え』を書いたり、言葉をオウム返ししたりする発達障害児の事例は、この時、私も知っていました。
だから「発達障害の特徴があるんです」と遠回しに言われている事が分かったし、その特徴の1つでもある「オウム返しをするんです」と言われている事が分かり、心の中で、強く否定していました。
家では、オウム返しなんてしないから!
どんな時にどんなオウム返しをするのか、疑問で仕方なかったので質問しました。もはや自分の口調は覚えていませんが、攻撃的な態度だったかもしれません。
お昼寝でおねしょをした時に、すぐに先生に知らせることができないのは、「先生が怖いから」「言うと怒られるから」「着替える時に言おうと思っていた」など、息子なりに理由があるかもしれません。
しかし、先生に「おねしょしたら、どうするんだっけ!?」と言われて、息子は「どうするんだっけ」と答えるらしい。なぜだろう??これが、いわゆるオウム返し?
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この「質問の反復」を指摘されてから、どうしてそんな「言葉の返し」をするのか、どんな時にそんな「語尻の反復」をするのか、よく考えました。自宅でも、息子の言動を注意深く観察しました。
そこで判明したのが、息子が私の言葉の語尻をオウム返し(反復)するパターン。
私がすごく強く怒って、怒鳴って、叱って、まくし立てて、言葉のシャワーを浴びさせた時。
私がそのシチュエーションの最後に言い放った言葉を、息子はオウム返し(反復)したのです。
例えば、決めた時間にお風呂に入らず愚図った時に、今は何をする時間だ!それなのに何をしてた!お母さんは何て言った!?ガミガミガミ…と散々まくし立て、最後に叱った内容を理解しているか試すために「じゃあ、どうすんの!?」と投げかけた時。
本当は「19時になったらお風呂に入る」と答えて欲しいのに、「じゃぁどうすんの」と答えたのです。
息子は、私が教えた内容ではなく、私の言葉尻を繰り返し、小さなか細い声でつぶやきました。
私が激しく怒った時なので今まで気が付きませんでしたが、息子の言葉(尻)のオウム返しは、私が威圧的に怒鳴って言葉で怒涛した時に、 自宅でも起こったのです。
それは、保育園で指摘された「質問の反復」と酷似すぎる状況でした。
※息子には聴覚過敏の傾向があり、息子にとって騒音のような言葉のシャワーを浴びせると、思考回路(聴覚)が停止して、話し手の言葉は耳に入らないことが分かりました。
※怒鳴り声が終わった時に、聴覚が復活して、最後に聞こえた言葉を言っているようです。「分かった!?」と言われて「分かった」と答えると、大丈夫だった成功体験から学んでいるようです。
保育園から指摘された特徴2.先生の指示が理解できない
息子は、興味がある事にはすごい集中力を発揮しますが、興味がないとスルー。先生のことは、怖くて嫌いだから、わざと話を聞いていないのでは?
保育園は、電車が見えるところにあり、教室の窓からは、電車が見えます。当時3歳、この時は電車が大好き。電車が気になって、電車の音を聞きながら、先生の話はスルーしてしまっているのでは?
私が「分からなかったら、お友達のマネをしなね。」と教えたから、上の空で何をするか分からない時に、遅れながら皆のマネをしているだけでは?
「理解できない」のではなく、「聞いていない」んだ。
と思いました。
首をかしげながら、精一杯、答えました。
「お話を聞いていない」ではなく、「理解していない」という表現で言い切られることが、疑問だったのです。
集団生活を前提に!「家ならできる」は基準じゃない。
怒り、戸惑い、不信。
そんな気持ちが渦巻いていました。保育園から指摘された2つの「発達障害かもしれない特徴」は、この時の私にとっては「意外」だったのです。
目が覚め始めたのは、主任の言葉。
母である私の言葉は理解する…?集団の中では理解できない…?
確かに、家だと息子が分かりやすいように、話しかけていました。
上の空の時は、肩をたたいて呼び掛けてから話しかけ、主語を意識して取り入れ、何かが気になって次のステップに進めない時は、すぐに察してフォローする・・・。
そんなフォローがない保育園での生活は、きっと息子にとって、「自分でも分からない過ごしにくさ」を感じていたに違いない。
息子の「先生が怖くて嫌い」の発言には、もっと色々な背景があるのかもしれない。
集団生活の中で、みんなが出来るのに息子にはできていない事を含めて考えると、このままじゃいけないことは明らかでした。
児童発達支援センターに連絡!発達凸凹対策が始まる-
主任が、この地域を管轄している児童発達支援センターの連絡先を教えてくれました。
自宅に帰り、頭の中で、保護者面談での出来事を整理するのは、時間がかかりました。
この後、夫にメールで
「怖くて嫌いな先生に怒られたら、内容なんて聞けないの当たり前!」「なのに、理解できていないって言われた!」
「障害児扱いされた!」
「言う事をすぐ聞く従順な子じゃないと、問題児かよ!」
…と、メッセージを連打して、愚痴っていますから。
それでも、葛藤しつつも。
その夜、「発達障害」をキーワードに、どれほど情報を漁ったことか。
息子が赤ちゃんの時からずっと、成長に応じてずっと、事あるごとにずっと、「どうしてだろう?」と悩んでいた答えが、少しだけ分かった気がしました。
発達障害の特徴を知れば知るほど、息子に当てはまったからです。「やはり息子は、発達障害なのかもしれない。」そう、認め始めたからです。
そして翌日、発達支援センターに連絡しました。
発達支援カウンセラーとの面談。予約できたのは2ケ月先のことです。
初めての発達支援カウンセリングで「発達凸凹」という表現を知り、私にとって本格的な発達凸凹対策が始まりました。