息子は、母子分離不安・こだわりが強い・行動と気持ちの切り替えが苦手・同時に複数の作業ができない・行動が遅い…などの特性があります。
これらの「困りごと」を抱えたまま、少しでもスムーズに小学校の集団生活を過ごしたいとの願いから、特別支援級(情緒学級)の在籍を決めました。
小学校生活が始まると、「想定外の困りごと」も見えてきて…。
今回は、通学初日に明確になった困りごと、「上履きの履き替えができない」問題を振り返ります。
「上履きの履き替えができるか?」は想定内の課題だった
就学前、息子が通っていたのは保育園。
保育園は裸足生活で、脱いだ運動靴を自分の下駄箱にしまい、教室で靴下を脱ぎ、終日園内を裸足で過ごすスタイルでした。
保育園の玄関で脱いだ土足は、自分の下駄箱にきちんとしまっていたので、学校でも「脱いだ靴の処理」はできるはずでした。
しかも入学前、「上履きを自分で履けるか?」という課題は想定内。
「入学式の練習」をさせてもらった時に、同時に「上履きを履く練習」もして来ました。
そう(私の中では)、上履きの心配事は解決したはずでした。
ところが…。
保育園出身児は要注意!?下駄箱にしまえても「上履き」が…
いざ、付き添い登校で、小学校の昇降口(下駄箱)まで一緒に行くと、なんと息子は身動きできずに固まっているではありませんか。
「靴を脱いで、上履きを履こう」と口頭で促しても、全くできない!
(どうしたらよいか分からず、固まっている)
保育園時代に上履き文化がなかったとは言え、初日からこんなに苦労するとは思いませんでした。
登校時は、「上履き」だけを手に持っているわけではなく、精一杯に重たいランドセルを背負って耐えながら、片手or両手が手荷物で塞がっている。
やっと下駄箱まで到着して、運動靴を脱いだ…は良いが、「大荷物を持ったまま、靴を履き替える」という行動が上手くできなかった…のです。
これは、もしかすると、上履きに履き替えて過ごしていた幼稚園出身児だったら、大した問題じゃなかったのかも。
裸足生活だった保育園出身児だったからこそ、要注意!?
颯爽と「上履き」に履き替える同級生
息子が何もできず固まる中、他の新入生の様子を見ていると、同じ「小学1年生」だとは思えないほどテキパキと上履きに履き替えていました。
・颯爽と昇降口で土足を脱ぐ
・時にはおしゃべりをしながら、脱いだ運動靴を片手で持つ
・自分の下駄箱の「下段」に土足を入れる
・下駄箱の「上段」もしくは「上履き袋」から、上履きを取り出す
・上履きを床に投げ置く
・床に置いた上履きが、横を向こうがひっくり返ろうが、器用に片足を突っ込みながら上向きに直し、手を使わずに履く
・両足が履き終わらないうちに歩き出す
・上履きを履きながら、教室に向かっていく
何ができないのか、伝えることの難しさ、よ。
普通は普通にできることが、訓練しないとできない子もいるんだよ、悪かったな。
コツを掴めば、息子だって必ず出来る。今は「大きな不安」がたくさんあって、その行動(=今は「上履きの履き替え」)が出来ないだけ。
置かれた状況に思考が追い付かず、フリーズする息子
息子の場合、最初はただ立ちすくんでいました。
背中に重たいランドセル、右手に道具袋(文房具が入った取っ手付きの巾着袋)、左手に上履き袋を持ち、両手が塞がった状態で。
ランドセルが重たいから、もしも今しゃがんでお尻を床に付けば、立ち上がることが困難だと分かっているようで、座り込むことは諦めていました。
どこにも捕まらずに靴を脱ごうと頑張っても、大勢の同級生たちが横をすり抜けていくため、体やランドセル同士が当たって、その衝撃でよろけていました。
左手の荷物はどうしよう?
右手の荷物はどうしよう?
床に置いても良いのか悪いのか?
何をどうしたら「上履き」を履けるのか、思考が追い付かずフリーズした状態でした。
つかまって脱げない!「下駄箱」自体は土足厳禁エリアにある
「まず、靴を脱ごうか?」と声をかけると、息子は我に返ってモジモジ動き始めました。
息子は息子なりに、靴を脱ごうとしました。
どこかに捕まろうとして、荷物で塞がった手で「下駄箱」に手を掛けようとしました。
ち、ちがう(汗)!
「下駄箱」自体は、土足厳禁のエリアにあります。
普通は、脱いだ土足を手に持ってから、土足厳禁エリアに立ち入り、自分の下駄箱まで数歩歩いて、自分の土足をしまう手順です。
この時点で、息子にとって「靴を脱ぐ」という動作は、「どこかに捕まりながら、靴を脱ぐ」というイメージだったらしく、土足のまま土足厳禁エリアを数歩歩き、自分の下駄箱付近に手を掛けました。
靴と上履きの「履き替え」工程は多すぎる…同時に複数の作業ができない子の場合
息子は、何かを考えながら、複数の事は同時にできません。
複数の作業を同時にやる時は、「複数のこと」を1つずつ分解して順番にする必要があります。
他の事を考えながらではなく、「1.脱ぐ」「2.歩く」「3.入れる」というように「動作の順番」を考えながら、「やること」自体に全集中した状態にしなければいけません。
そうしないと、上手くテキパキできません。
然るべき場所で土足を脱ぎ、上履きを取り出して履く「履き替え」の動作は、とても工程が多い作業でした。
「動作の順番」を整理する必要がありました。
脱いで入れて出して履く!下駄箱の作業をステップ化
息子が混乱した時に、「1つずつ順番に。イチ〇〇、ニ〇〇、サン〇〇、…」という声掛けは、私がいつも息子に言っている基本的な言い方です。
まずは、最初の立ち位置に、息子を連れ戻しました。
私は息子の「聞く体制」を整えてから、昇降口に着いたら行う作業の「順番」を教えました。
- 靴を脱ぐ。
- 靴を持つ。
- 自分の下駄箱に行く。
- 下段に靴を入れる。
- 下段から上履きを出す。
- 上履きを床に置く。
- 上履きを履く。
上履きに履き替えるだけでも、こんなに順番(ステップ)があって、難しいです。
※ 実際にここで、「難しいね!」と一声入れると、多くの手順を覚えなければという自覚が芽生えて効果的。
作業の流れが分かったところで、息子に覚えてもらうステップを簡潔化して、体で覚えます。
- 靴を脱ぐ。
- 靴を入れる。
- 上履きを出して、履く。
という3ステップを何度も復唱しました。
息子の動作に合わせながら、私がこのステップを声に出す。これを数日続けました。
最初の1週間くらいで、息子は「まず、靴を脱ごう」とか「イチ、靴を脱ぐ」という最初の声掛けで、「履き替え作業」を始められるようになりました。
動作をステップ化することで、昇降口での「履き替え」作業がだいぶスムーズになりました。
月曜日は手順を変更!上履きは下駄箱にありません。
ところが翌週、週明けの月曜日。
「1.靴を脱ぐ」「2.靴を入れる」までのステップは良いのですが、「3.上履きを出して履く」の場面で、息子は空っぽの下駄箱から上履きを出そうとしたのです!
月曜日の朝、上履きは、自分で持っている上履き袋の中にあります。
いつも通りに、下駄箱の上段を見ても、上履きはありません。
私は「上履きは、どこにあるっけ?」とクイズを出題。
息子が自分で、上履きの在処に気が付くまで、(暫く)待ちました。
- 靴を脱ぐ。
- 靴を入れる。
- 上履きを「上履き袋」から出す。
いつもと違う週明けは、「月曜日」専用の手順でステップ化する必要がありました。
★補足★
因みに、息子の場合、この「週明け手順」の必要性は、通学2週目に気が付きました。
第1週は、上履きを持参するのは、入学式当日だったからです。
入学式は保護者と一緒に昇降口で上履きを履くので、「上履き袋から上履きを出す」動作を本人に促しながらも、無意識に手伝っていました。
そして、上履きはそのまま自分の下駄箱に置いて帰宅。次に登校した時には、「自分の下駄箱の上段」に置いてある状態でした。
初めて「上履き袋」を持って登校する日が、要注意です。
雨の日は一工夫!傘と長靴の処理も忘れずに
息子が次に昇降口でフリーズしたのは、初めての「雨の日」でした。
息子は既に、脱ぐ・しまう・取り出す・履く…という「履き替え」作業のステップは、だいぶスムーズに出来るようになっていました。
いつものように、靴を脱いで、いや「長靴」を脱いで、下駄箱に入れようとした時にフリーズ!
私も即座に、いつもと違う”2つの状況”を目にしました。
<1>靴より大きな長靴が、下駄箱の下段に入らない!
<2>閉じた傘を持ったまま、下駄箱の前にいる!
という状況だったのです。
「傘を畳むこと」に注力し過ぎて、自分で上手に畳めたことを褒めた矢先でした。
言うまでもなく、「雨の日」用のステップが必要でした。
- 傘を傘立てに刺す。
- 長靴を脱ぐ。
- 長靴を斜めにして突っ込む。
- 上履きを出して履く。
上履きタイプの変更、放置して寝転んででも履かせる…その子に合わせた対処法
私の方法は、どちらかと言うと「先回り法」で、本人が本当に困る前に、対処方法を教えてしまっている感じです。
もしかすると、「靴をしまって上履きに履き替える」作業なんて、他の子を見て周りの真似をすれば、いつか必ず出来るようになるワケだから、放っておけば良かったのかもしれません。
そんな葛藤は、いつもあります。
実際、同じ特別支援級・情緒クラスの友達は、昇降口で土足を脱ぎ、背中と両手いっぱいの荷物を抱えたままその場に寝転んで、全ての荷物を自分から外した後、どうにか上履きを履いています。
その場に散乱した荷物をかき集め、土足を下駄箱にしまい、体操服袋の紐を足に絡めながら、教室に向かっています。
支援級か普通級か悩んだ末、普通級を選んだTくんは、ランドセルを背負ったまま下駄箱前で上向きになり、いつも足で宙を漕いでいます。
後から登校した友達の邪魔になるので、文句を言われたりケンカになったりしますが、誰もいなくなった後、どうにか上履きに足を引っかけて、教室に入ります。
また、小学校の上履きは、甲にバンドがあるタイプです。
足先だけを上手く動かせない子にとっては、足を入れる時に、このバンドが邪魔です。
上履きのタイプが、履く動作を余計に難しくしています。
そのため、クラスに一人だけ、甲にバンドがないタイプの上履きを使っている子もいます。
どれも正解なのだと思います。
その子に合った対処ができていれば良いのだと感じながら、私はたまたま「付き添い登校」という背景があるので、暫くは、実際に目撃するからこそ出来るサポートを続けることにします。
息子の情緒安定を最優先に考え、この調子でスモールステップで「ステップアップ」を目指します。
–追記
3学期現在、「大荷物を持ったまま、上履きに履き替える」という作業が、(動作はゆっくりですが)出来ています。