自閉症スペクトラム・聴覚過敏の特徴を持つ息子が、この度めでたく、映画館デビューしました。
初めての映画館。観賞したのは、2019年5月31日に公開された「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」です。
映画館と言えば、大音量!
聴覚過敏な子には、辛い暗闇です。
映画好きだった私が、息子が産まれてから約5年間、映画館にはずっと足を運ぶことが出来きませんでした。ここに来るまで準備したこと、体験してみて分かったことをまとめました。
映画館デビューが「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」だった理由
自閉症スペクトラムの診断を受けている息子には、視覚優位な特徴があることは、他の記事のエピソードで伝わっているかと思います。
視覚優位な子には、これからやろうとしている事・説明したい事について、実際の映像を見せるのが一番効果的です。そこで毎日、利用しているのがYoutube。
ここで「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」の映画CMを見たことが、きっかけだったと記憶します。
2016年に公開された「シン・ゴジラ」が地上波で放映され、紫のビームを出すゴジラを見て以来、息子はゴジラが大好き。ゴジラのフィギュアを使って、よく闘いごっこをしていました。
そして今回、「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」の映画CMで、息子を釘付けにするシーンが!・・・そう、あの「シン・ゴジラ」では見られなかった、巨大モンスター同士の戦いシーンが、そこにありました。
今まで、仮面ライダー・ドラえもん・ポケットモンスター等、子供向け映画のCMを見ようとも、何の反応も示さなかった息子が、今回の「ゴジラ」CMには食いつきました。
公開日が近づくにつれて、息子の「観たい」という想いは募るばかり。
映画館で観なくてもDVDやテレビでも後から見ればいいんじゃない?-と、夫が買って来てあげた「ゴジラ2019」のフィギュアは、毎日持ち歩く。新しいゴジラ(他モンスターズ)のフィギュアは、この時から息子の「こだわりモノ」です。
親が決断する前に、息子は映画館で観る気マンマンでした。
事前に言い聞かせ!映画館でのルールを教え込む
・映画館では、静かにしなければならない
・一度座ったら、出たり入ったり好き勝手にできない
・大きな音がする(耳を塞がなくてはならない)
・ずっと暗い
・怖い場面もたくさんある
・見たくない場面を(いつも見ている録画やYoutubeのように)早送りすることはできない
まず私が始めたのは、言い聞かせです。息子が「映画館でゴジラが観たい」と言う度に、映画館でのルールを言い聞かせました。
何度も何度も言い聞かせて、いつも返事は「分かってる」。本人の「映画館に行く」という待ちに待っている気持ちが伝わってきました。
ルールを言い聞かせた時の息子の納得度は、本当に大丈夫そうだという印象を受けました。この感じ・・・プラネタリウムに挑戦した時と似ていました。
映画より短く環境は酷似!プラネタリウムで練習しておく
今から思えば、プラネタリウムで失敗と成功を経験していたことが、得策でした。
過去に、「宇宙が好き」「星座が分かった」「プラネタリウムが観たい」という気持ちが先行して、プラネタリウムに挑戦したわけですが、心の片隅には”映画館の練習にもなる”という気持ちもありました。
1年半くらい前はプラネタリウムにも耐えられず5分で退散、その1年後にはプラネタリウム挑戦に成功、更に半年ほど経って今回、映画館で映画鑑賞を体験できるまでに成長しました。
プラネタリウムが本当に役立った!プラネタリウムで練習しておいて良かった!と実感しました。
聴覚過敏な子にとって、プラネタリウムが映画館の練習に最適な理由は、やはり暗闇と大音響という環境が似ているからです。
平均的な聴覚でも、明るい場所より暗い場所の方が聴覚が研ぎ澄まされて、音が大きく聞こえるのに、聴覚過敏な子なら尚更です。しかも本当に大音量、大音響。前や後ろには知らない人が座っていて、不安を煽る環境です。
音と振動に敏感な子、映像もリアルだから視覚情報もかなり強烈!という場合、その環境で何の対策もなしに挑めば、私の経験上では、もって5分。
そんな環境は、感覚過敏な子にとって過酷ですが、映画館なら約2時間、プラネタリムなら約40分と考えると、どう考えたって映画館に挑戦するより先に、プラネタリウムで練習した方がいい!
子供向けプラネタリウム番組なら、約20分という短い時間のタイプも探せばありました。
聴覚過敏な子の映画館デビューには、事前にプラネタリウム番組で練習したことが役立ちました。
耳を塞ぎながら鑑賞できるアイテムを持参する
最近、聴覚過敏について、テレビでも特集されたことをご存知ですか?
私はそういう番組を見たり、当事者のご家族がツイートした内容を見たり、情報を得ることで私自身も検討していたことがあります。
それが、防音イヤーマフの購入!
防音イヤーマフは、言わばヘッドホンの形状で、普通のヘッドホンとは効能が逆、つまり「音をよく聞けるように」ではなく「音が小さく聞こえるように」耳に付けるアイテムです。
映画館で映画鑑賞するなら、念のため、防音イヤーマフを持ち込み、息子が必要とした時にしてあげよう、と思っていました。
ところが、映画館デビューの日は、突然やってきた!
「5月31日に公開なんだから、6月に入ってゆっくりどこかで観ればいい」という私の感覚に対して、「よーし!明日観に行こう!」と唐突な夫。
それを聞いた息子は、もうその気マンマン。明日じゃなくて来週か再来週にしようなんて、言い出す雰囲気じゃありません。
防音イヤーマフの購入を検討しているうちに、映画館デビューの日が訪れてしまいました。
そこで準備したのが、頭からかぶって耳を覆うことができるフェイスタオル!
タオルをかぶって、タオル越しに耳を塞げば、聞こえる音が小さくなって安心。タオルで包まれた感じが、安心感を倍増させます。
自分の両手を使って、ずっと耳を塞いでいるのは疲れるけど、これならタオルが耳の外側の空気を多少遮ってくれているので、手を離しても(何もないよりは)防音できます。
このフェイスタオルを使って、耳を塞ぐ練習を家でしました。そして映画館デビュー当日に持参!特に前半で大活躍でした。
ヘッドホンを貸し出している映画館もある!
映画館によっては、ヘッドホンの貸し出しが行われていることが分かりました。
ただし、私が行った映画館では、貸し出しヘッドホンの利用前提が「耳の不自由な方」という名目でした。
「スイッチを入れなければ、防音イヤーマフとして使えるのか?」が気になったけど、今回は確認できませんでした。
行ってみないとどのくらい耐えられるのか、防音イヤーマフ(の代わりになるヘッドホン)が借りられるか分からない・・・。
事前に問い合わせることができるなら、”映画館に確認してから行く”が正解かもしれません。
ただせっかく借りたのに、機能的な部分で役立つのか不安だから、防音目的なら、耳を塞ぐアイテムは持参した方が良いと思いました。
いつもと同じもの・自分のもの・慣れたものを使うことが、不安を軽減して聴覚の過敏さを軽減することにもつながるかな、と思いました。
たとえフェイスタオルでも!何もないより役立ちましたよ。
聴覚過敏な子が辛かったのは、何よりもプロペラ音!
途中途中で、(ゴジラじゃなくて息子が)ピンチな場面もありましたが、なんとかフェイスタオルで耳を塞いで凌ぎました。
途中から、息子が何に怖がるのか分かってきました。怪獣の声でも爆発や格闘シーンでもなく、プロペラ機が飛ぶシーン!
確かにプロペラ音は、怪獣の「ガオー!」や爆発の「ボッカーン!」よりも劈くような、耳に響く音。
加えて私が思ったのは、プロペラ音を響かせてプロペラ戦闘機やヘリコプターが飛ぶシーンって、シーンが切り替わる時に多いんですよ!
今まで観ていた場面がカット → 海の上を飛んで移動するヘリコプターのシーン!そして対策本部で話し合うシーンを映し出す!
みたいな。
だから、上の「→」のタイミングで、ビクっとなるわけです。プルプルブルブル大音量が突然鳴って、画面もバっと切り替わるわけですから。
息子が一番、驚いてビクっとなり、耳を塞いで辛そうだったのは、人工音「プロペラ音」でした。視覚情報との絡みも影響したかもしれません。
映像よりも先に大音量の予告をしてあげると効果的!
「ヘリコプターが飛んでいるんだよ」
「キングギドラがいる方へ向かったんだよ」
息子の耳元で、映像の囁き声で説明しながら、安心させることに努めました。
何がどうなっているか分からないと不安だから、見えているものが何なのか説明してあげると、だいぶ落ち着くことができました。
そう考えると、プロペラ音が鳴り響くシーンに切り替わる時も、切り替わる前に「ブルブルブルってうるさい音が聞こえるからね」と、事前に予告してあげられると良かったのかも。
(初めて観る映画でそれは難しいけど…。可能かどうかは別として。)
”次に息子が驚きそうなものが出て来そう”と事前に分かった時は、視覚に入る前に、「ゴジラ来るよ」「モスラ出てくるんじゃない?」と、囁き予告することができました。
大音量、ビックリしそうなことを囁き声で事前予告するのは、効果的でした。
聴覚過敏でも映画館デビュー!まとめ
こうして、聴覚過敏の息子は、映画館で「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」を最後まで観ることができました。なんと2時間12分!
映画が始まるまで最初の15~20分は、今後公開予定の映画CMが流れていたから、トータル2時間30分以上は席に座っていたと思います。
すごい!
劇場から出る時、頭をなでなでしまくって、褒めまくりました。
「まだ映画館は無理かもしれない」と思い続けて来ましたが、いざ実際に体験してみると、事前に準備したことが功を奏しました。
事前にやること・準備すること・練習することとしては、
・映画館でのルールを教え込む
・映画と似た環境であるプラネタリウムで練習する
・持ち込む防音アイテム(防音イヤーマフなど)に慣らしておく
実際に体験して分かったこととしては、
・大きな音が不安なら、防音アイテムを持参する
・映画館の貸し出しヘッドホンが利用できる場合がある
・劈くような音(プロペラ音など)が鳴り響く時が辛い
・映像よりも先に大音量の予告をすると効果的
ということでした。
夏に向けて、子供向け映画が次々と公開されるから、少しずつチャレンジしようと思います。