息子はこだわりが強い子で、一度気になると気が済むまで見たり、気になることを放置して次に進むのが苦手です。
保育園で「専門機関で診てもらった方がいい」と指摘され、療育に通うために自閉症スペクトラムの診断(意見書)をもらいました。
保育園に通っていた4歳~5歳の頃、息子は「てんとう虫」に強くこだわった時期がありました。
今回は、「てんとう虫」に纏わるASD児のこだわり行動と対処法についてご紹介します。
こだわる固執対象は変わるけど一時に1つだけ
発達障害、とりわけASD(自閉症スペクトラム)において、「こだわりが強い」という特徴は代表例だと思いますが、息子の特性としても目立つのがこの「こだわり」です。
息子の場合は、物事の手順やルール化など「決まったやり方」が日常生活のあちこちに存在する一方で、何か1つの物に固執するという「こだわり」もありました。
「好きなもの」「興味あること」と言えば聞こえが良く、問題なさそう?むしろ夢中になれる何かがあって良いという高評価に繋がりそうですが…。
「〇〇好き」の一言では済まない何かがあるのが、ASDのこだわり。日常生活に支障が出るレベルかどうか考えると、見分けやすいと思います。
4~5歳の頃、日常生活に支障が出ていた息子のこだわりは、「てんとう虫」です。
保育園時代の息子は、いつも何かに固執していました。その固執(こだわり)っぷりに寄り添ってこちらも慣れた頃、気が付くと固執対象への興味が薄れていて、次の別の何かにこだわっていくのですが…
『ナガミヒナゲシ』へのこだわりが弱まって、息子が次に固執したのが「てんとう虫」でした。
息子のこだわりは、同時期・同時に色々なものに固執するのではなく、その時の固執対象は1つだけ。
何をやるにも、どこへ行くにも、その時の固執対象で頭がいっぱいです。
保育園のお迎えにも「虫かご」必須!
「てんとう虫」にこだわっていた時期は、どこへ行くにも虫かご持参でした。
てんとう虫を見つけたら、捕まえて入れるためです。
息子はどの葉っぱにてんとう虫がいるのかよく知っているため、道端のその植物を1つ1つじっくり見ながら歩いていました。
自宅から保育園までは徒歩10分程度の距離ですが、この頃は毎日30分以上かけて帰りました。
流石に朝は無理。道草されると仕事に間に合わない朝の送迎は、徒歩ではなく車でした。
「朝は車」という状況とルールを息子は理解していたので、ここは息子が我慢してくれました。
その代わり、夕方、保育園に迎えに行くと、息子はすぐに「虫かご」を持ってきたかどうか私に聞きました。
朝に我慢ができるのは、夕方の帰りには歩いて「てんとう虫」を探せるという約束事(ルール)があるからであり、私が虫かごを忘れた時には、ひどい癇癪を起こしました。
何を言っても耳を貸さなくなる癇癪状態になり、その時の自分の疲弊具合を考えると、どんなに格好悪くても私が虫かごを持ち歩いて行動した方が楽でした。
だから必ず、自分のカバンに空っぽの虫かごを入れて持ち歩き、保育園に迎えに行きました。
強いこだわりに「無」(無視/無意味/無駄…etc)はNG!
仕事の都合上、どうしても虫かごを持ち歩けない事情がある時は、虫かごではなく「ビニール袋」で代用しました。
虫かごではなくビニール袋になってしまった日は、その理由を説明しました。
ゆっくり丁寧に説明すると、息子も私の状況を理解してくれて、「明日は虫かご持ってきてね。」と言ってその日は我慢してくれました。
ひどい癇癪を通して分かったのは、強いこだわりに対して「無視」「無意味」「無駄」「無理」などの『無』を持ち出すと事態もこだわりも悪化するということでした。
【NGワード】→事態悪化
「もう知らない」(こだわりを無視)
「そんなの無理」(こだわりを拒否)
「そんなのいらないでしょ」(こだわりを否定)
…etc
後から言い聞かせる時に、その無意味さを問うことはありますが、強いこだわりパワーがメラメラと燃えている時に、こだわりそのものを否定するとかなりこじれました。
「こだわり対処」か「わがまま許し」か判断が難しい
てんとう虫に固執し、「てんとう虫を見つけたら捕まえたい」とこだわり、「帰りに毎日捕まえる」というルール。
息子の固執とこだわり行動は、日常生活(特に保育園のお迎え時)に支障は出ていましたが、何が何でも「虫かご」を持ってこい!というワガママとは少し違うかな、と感じていました。
一方で「強いこだわり」現象は、そのこだわりや要望にどこまで寄り添うのか、どうやって付き合うのか、とても難しい問題です。
毎日、虫かごを持って保育園に行きながらも、自分が虫かごを持ってお迎えに行くことが果たしてベストなのか?単なるワガママに従うのと何が違うのか?…いつも葛藤がありました。
こだわり対処法なのか、わがままを許しているだけなのか、判断がとても難しいです。
「こだわり対象」に承認要求?共感を求めてくる
息子が「てんとう虫」にこだわり毎日観察する時に、一人でじっくり見てくれるなら、私は待てば済む話。しかし息子の場合、一緒にいる私にも見て欲しくて、観察の一部始終を付き合わされました。
「あ!てんとう虫の幼虫!ほら、来て来てきて」
「早く!こっちこっちこっちこっち」
「あ!さなぎ!見て見て見て見て」
あちこちで幼虫・サナギ・成虫を見付ける度に、私を呼びつけました。
共に一緒に行動し、息子が見たこと感じたことに、共感しなければいけない。この行動がけっこう大変でした。
私が一緒に見て「ほんとだ~。〇〇だね~。」と感想まで述べないと、息子は納得してくれません。
見ないで適当に「ほんとだ~」と言ってもすぐに見抜かれて、「何を見た?見てないよね?」と指摘されました。
もしも先にスタスタ歩いて「早くしなさい!」と言ったら、どうなってしまうか知っていたので、急いでいる時こそ「本当だ、〇〇だね」と共感しました。
固執対象ごとに「細かいこだわり」もある
大枠では「てんとう虫」がこだわり対象でしたが、このこだわりを取り巻く行動の中で、色々と「細かいこだわり」もありました。
その1つが、虫かごに入れるのは「てんとう虫」だけ、です。
私は、てんとう虫がいる葉っぱごと取ってしまう方が楽だし、てんとう虫を触らずに済むし、アブラムシが付いた葉っぱごと入れる方がエサにもなって一石二鳥だと思ったので、葉っぱごと虫かごに入れたかった。
この理由を何度も説明しましたが、最後まで納得してくれませんでした。
虫かごの中には、「てんとう虫だけ」が入っている状態が良いそうです。
もう諦めて、息子が自分で捕まえる時は、息子のルール通り、てんとう虫だけを虫かごに入れることにしました。
私に捕まえてと頼んできた時は、葉っぱごと一緒に虫かごに入れて良いルールにしてもらいました。
「こだわり」に付き合うも限界を経験
虫かごに入れててんとう虫を連れて帰った場合、てんとう虫のエサが必要でした。
エサであるアブラムシを獲って与えるのは、当時の息子には難しく、私がアブラムシを獲る役を引き受けました。
自宅から保育園へお迎えに向かう道沿いで、黒いアブラムシが集る雑草を見つけては、ビニール袋に入れて持ち帰りました。
そんな生活が1週間ほど続くと、私も疲れてしまい、流石に「これは良いと言えない」と思えました。
無視でも拒否でもなく「こだわり」に寄り添う対処法
そこで、息子の「てんとう虫を連れて帰りたい」という気持ち(=こだわり)は尊重しつつ、手伝えること/頑張ったこと/これ以上は出来ないこと…など、状況と理由を説明しました。
お母さんは、頑張ってアブラムシを探した。
アブラムシを見つけるのが大変になってきた。
→ てんとう虫は、自分でアブラムシを探せるから、自分で探してもらおう。
虫かごに入れて連れて帰って来たてんとう虫について、どうするか話し合いました。
虫かごの中は、てんとう虫のウンチがいっぱい。
虫かごをキレイに洗う必要がある。
虫かごの中に、てんとう虫がいると、虫かごが洗えない。
→ てんとう虫は、ベランダのお花に住んでもらおう。
ベランダの花壇には、アブラムシがいる時といない時があるかもしれないけど、アブラムシがいない時、てんとう虫は飛んで自分で探しに行けるから…と結論が決まりました。
「見つけたてんとう虫を虫かごに入れて連れて帰る」というルール(=こだわり)は相変わらずですが、「帰ってきたらベランダの花壇に放つ」という行動パターンに変化しました。
息子のこだわり行動は、背景をイメージして理由を納得できた時、本人が理解して変化・軽減できることがあり、ただの「わがまま」とはちょっと違うなと実感しています。
自分で決めたルール通り、自分で納得したやり方でやる、というのが「こだわり」なんだなと思います。
「てんとう虫」は滞在期間に”こだわり”なし
息子の「てんとう虫」こだわり行動。
新ルール適用後、てんとう虫(成虫)の住処はバルコニーの花壇ですが、エサが不要なサナギは虫かごに残しました。
数日後、サナギから成虫が出てきました。私も初めて脱皮シーンを見たので、息子のこだわりに付き合う過程で意外な発見もありました。
花壇に放ったそばから飛び立つ元気なてんとう虫もいれば、虫かごから出ようとしない内気なてんとう虫もいました。
朝起きて、昨日放ったてんとう虫がまだ花壇にいると、息子は大喜びでした。
てんとう虫の滞在期間は平均1泊2日という感じでしたが、決まり(こだわり)は無いようです^^
「こだわり」は軽減しても形を変えて続く…
てんとう虫を捕まえて、ベランダの花壇に放つ。次第に、このルール(こだわり行動)を忘れる日ができて、数日に一度のペースになり…。
特に指摘もせず、気にする時は寄り添い…を繰り返すうちに、やらなくても気にしなくなりました。「強いこだわり」も軽減するんだなぁ。
しかし、「てんとう虫」への強いこだわりは、別の形で続きます。
てんとう虫の絵かいて、ハサミで切り抜く。という作業をするようになりました。毎日毎日。
息子が描いて切り抜いたてんとう虫の作品は、絵本で見るようなてんとう虫だけでなく、サナギや脱皮してばかり?の黄色い成虫もありました。
てんとう虫の生態や特徴など細かいことまで知っていて、こだわり故の観察力はスゴイです。
息子はその時の「こだわりモノ」を持ち歩く特性もあり、自分で作った「てんとう虫」の作品を持ち歩いていました。
私が「ASDのこだわり行動」について調べている中で、とても分かりやすくて勉強になった白石先生の本です。