感覚過敏のお子さんについて、お風呂に関わる悩みを多く散見します。
顔が濡れるのがイヤ、洗髪ができない、というパターンが多い中、ASD息子を相手に私が悩み続けたのは「お風呂の時間になっても、なかなか来てくれない」ということです。
息子は、ASD(自閉症スペクトラム、いわゆる発達障害)。気持ちと行動の切り替えが苦手という特性が、大きく影響しています。
成長と共に「正攻法」にシフト!
パート1では、「玩具で釣る」に一工夫。(2~3歳頃まで)
パート2では、「お母さん大好き」な気持ちを利用。(4歳前半)
という方法について、ご紹介しました。
今回のパート3からは、嘘も芝居もいらない「正攻法」で対応します。(4歳後半~)
”理由ありき”ではなく習慣化して欲しい…「お風呂に入る」ということ
お風呂に入る理由は、玩具でも「お母さんが泣くから」でもありません。
息子も4歳後半。
「お風呂に入る」ということは、「お風呂の玩具で遊びたい」とか「お母さんが呼んでいる」とか、そういう理由付けが前提になって欲しくない。
もちろん体を清潔に保つという理由付けは伴うけど、日常ルールとして認識して欲しいのです。
「20時頃に入る」とか「夕食後に入る」とか。習慣化して欲しいのです。
息子は、言葉の揚げ足取りが得意で、納得できない事には質問攻めしてくる特性もあります。
「お風呂に入る」ための理由を延々と語って、論破してから「お風呂に入る」のではなく、単なる日常のサイクルにして欲しいのです。
だから、入浴本来の衛生面上の理由を息子が納得した上で、更なる次のステップを目指します。
習慣として、決まりとして、「お風呂に入る」のは当たり前で、毎日嫌がっている場合ではない。嫌がる必要はないのだと、理解させて行きたいです。
予定の”予告”は絶対に必要!これなしに「お風呂の時間」は始まらない
まずは、事前に丁寧に「お風呂の時間」を予告しました。
・時計の長い針が「6」になったら、お風呂だよ。
・時計の長い針が「6」になったら、「お風呂だよ」って言うね。
・時計の長い針が「6」になったら、お母さんはお風呂に入るよ。
・時計の長い針が「6」になったら、遊びや図鑑はいったんストップ、片付けなくて大丈夫。そのまま「待っててね」。
・お風呂から出たら、続きをやろうね。
ということを、息子が「分かった」というまで説明しました。
問題は、頭では分かっているけど「行動の切り替えができない」、行動に移せない…という、発達凸凹な特性です。
でも、何時になったら「お風呂の時間」なのか、理解している。
「お風呂の時間」を認識させるところまでは成功しています。
約束の時間が来たら、「お風呂の時間が来てしまった!」と理解している。
だからこそ、「お風呂の時間」が来た時に、癇癪&パニックを起こしているのです。
時計の針を見ながら、息子が「なっちゃった!なっちゃった!」と叫んでいるのは、私が事前に教えた「時間」をちゃんと覚えているからです。
「お風呂の時間」の予告については、まず成功と言えるでしょう。
予告した「お風呂の時間」になったら声掛け・代弁スタート
ここで示す行動は、2つ。
1つ目は、癇癪パニックを起こそうと、約束は約束。自分が納得したはずの「お風呂の時間」が来たのだから、今は「お風呂に入る時間」なのだと示すこと。
ここで、「癇癪を起こせば、”お風呂の時間”が変わるのだ…」と、誤学習させるわけにはいきません。
2つ目は、「時間」が来たけど大丈夫なのだと、安心させてあげること。
泣いて喚く必要なんてないのだと、教えてあげること。
私は予告通り、浴室に向かいます。
たとえ息子が床で駄々をこねていても、「お風呂の時間だから、お風呂に入るね。」と声を掛けてから、浴室に向かいます。
「もしかして、遊びが終わりだと思って泣いてるの?」
「もしかして、図鑑が途中だから泣いているの?」
癇癪を起こしているのは、お風呂が嫌だという単純な理由ではなく、お風呂の時間が来て、何かを途中で辞めるのが嫌なのでしょう。
まだ何かを続けたいのに、ここで辞めないといけないから嫌なのでしょう。
それを何となく察して、代弁します。
入浴準備をしながら、代弁します。
そこで息子の元に戻り、手を引いて一緒に歩くと、素直に脱衣所に来てくれることもあります。
息子を導くには、「安心感」がキーとなりそうです。
癇癪には「共感」と「条件付き妥協」…浴室に向かうタイミングは視覚アピール
手を引いても脱衣所に来てくれない、残りの90%は、「共感」と「条件付き妥協」で対応しました。
「まだ〇〇を続けたかったね。お風呂に行くのが面倒臭いよね。」と共感した後、”先行き不安”な気持ちを拭います。
「お風呂は、長い針が「10」で終わるから、大丈夫だよ。」
「お風呂から出て、パジャマを着たら、続きをやろう。」
と先の予定を教えてあげて、安心感を与えました。
それでもダメな時は、「条件付き妥協」です。
誤学習はさせたくないけど、苦肉の策の「交渉」です。
予告通り、お母さんはお風呂に入るけど、あなたは〇〇までにお風呂に来てね。…という具体的な条件を出しました。
視覚優位な息子に対して、「時計の数字」にマークを付けてタイミングを教えることは有効ですが、ここで言う条件が「時計の数字」だと、視覚アピールが足りません。
お母さんが「髪の毛を洗っている間」に、裸になる。
お母さんが「髪の毛を洗い終わるまで」に、お風呂のドアを開ける。
「私の洗髪が終わるまで」にお風呂場に来ること。という具体的なルールを作りました。
「まだ遊びたいけど、お風呂に行かなくちゃ行かなくちゃ…」と焦ってプチパニックの息子が、どのタイミングでお風呂に入れば良いのか、具体的な表現にしました。
※ 私は一番先に「髪を洗う」派なので、私が浴室に向かってから約10分くらい、息子に自由時間(心の準備時間)が与えられたことを意味します。
※ 我が家の浴室のドアはガラスなので、脱衣所に来れば、入浴の進捗状況が分かります。
※ 逆に、入浴中の私から見ると、脱衣所の息子の様子が分かります。
お風呂場のドアが閉まり、シャワーが出る音が聞こえると、息子は浴室まで真っ先に様子を見に来ます。
本当に「お母さんがお風呂に入ったのか?」と、目で見て、確かめている感じ。
この時に息子は、本当に「お風呂の時間」が始まったことを視覚で理解します。
息子にとってのカウントダウン「お母さんの洗髪」が、始まったことを認識します。
「ルール通り」だから大丈夫!安心感が行動を促す
予告通り、「お風呂の時間」が始まった…と理解するわけですが、ここで癇癪第2弾が始まります。
「お母さんが、先にお風呂に入った」という事実を認識したことで、自分は「お風呂の時間」に”間に合わなかった”と感じるらしい。
癇癪を起こして、バスマットを蹴り飛ばしている息子の姿が、浴室のドア越しに見えます。
ある時は、「待って!待って!待って!」と泣き叫びながら、私の洗髪が進捗するのを阻止しようとします。
私は、息子に”髪の毛を洗っている場面”を見せながら、声をかけて安心させました。
「お母さんは、まだ髪の毛を洗っている。」と認識させます。
つまり、あの条件、「お母さんが髪の毛を洗っている間に、お風呂に来る」というルールは、まだ守られているから大丈夫だと、認識してもらいます。
「髪の毛を洗い終わるまでに、お風呂のドアを開ければ良い」のだから、まだ大丈夫だと、伝えます。
この時、笑顔であることが重要です。
・お母さんは、怒っていない(ニコニコしている)
・お母さんは、まだ髪の毛を洗っている
・お母さんとの約束にまだ間に合う
目の前のシーンから、それが「ルール通り」「まだ時間がある」と理解すると、自信が湧いてくるようです。
癇癪は収まり、息子はテキパキと洋服を脱ぎ始めました。
ルールを守った!「できた」気持ちで終えると肯定感を高める
ルールを守ろう、時間を守ろうという意識ばかりが先行。急ぎ過ぎて、気持ちが空回りしていることが多いです。
袖から手が抜けずにジャンプしていたり、Tシャツから首が抜けずに叫んだり、うまく服を脱げない時は、更に声をかけて安心感を与えています。
・遅くなった気がしたけど、お母さんは怒っていない。
・お母さんが「ゆっくりでいいよ」って言ってくれた。
・お母さんとの約束にまだ間に合う
そんな気持ちが働くらしく?
いったん、ホっとしたような、安心したような表情をします。そして、ニコリと微笑んだ顔を見せてくれます。
裸になって浴室に入ってきた息子は、「ルール通り」に「間に合った」ことが自信に繋がり、ドヤ顔です。
息子は、バスマットを蹴り飛ばしていた癇癪が嘘のように、「今日も間に合った!」という肯定感に満ちています。
こだわり強い子の「こだわりルール」と化すれば、本人が守り抜く!
それが続くと、いつしか息子の行動にも変化が現れました。
浴室のドアが閉まる音・シャワーの音が聞こえると、真っ先に浴室まで様子を見に来る…ところまでは、同じです。
その後の行動が、進化しました。
「あ、まだ大丈夫だ!」
という顔をして、リビングルームに戻って行き、一人で遊びの続きを始めるのです。
この時たいてい、一人で図鑑を読んでいます。お風呂から出て来ると、ページが開かれた状態で、図鑑が床に置かれているので分かります。
先に私がお風呂に入ってしまった事実を知るや、バスマットを蹴り飛ばして癇癪を起こしていた息子が、嘘のよう!
2~3分毎に、また浴室まで様子を見に来ます。
気になり過ぎて、30秒ごとくらいに見に来た時は、こっちが疲れて、
とか、
など、遊びを終わりにするタイミング(=来るタイミング)を具体的に教えてあげました。
「お母さんが髪の毛を洗い終わるまでに、お風呂に行く」という約束が、息子自身の「こだわりルール」として定着した時、それはそれは本人が自分で守り抜いてくれます。
こだわりの強い子にとって、一度定着した事は、良くも悪くも執着ともいえる「こだわりルール」になっていきます。
これが、全ての生活がうまく回る方向に活かせるといいんですけどね。
次回は、少しバージョンアップした【5歳編】をご紹介します!