軽度ASD(自閉症スペクトラム障害)の息子は、毎日その時に”イメージしているもの”を持ち歩きます。
厳密に言うと、イメージを具象化・象徴化した玩具(アイテム)を握って持ち歩き、握って寝ます。
この「こだわり行動」に毎日向き合っているのですが、私が読み返している本に衝撃の事実が載っていたのです。
それを知って試して考えてみた・・・というのが、今回の話です。
ASD息子の「こだわり行動」とは?
ASDの息子には、数々の「こだわり行動」があります。ここでは毎日握って持ち歩く「こだわりモノ」に焦点を当てます。
何かを持ち歩くことで、ちょっとしたトラブルになったり・・・
本来は「持ち歩く」用途ではないために、パニックにつながったり・・・
こだわりの拡大や増長を防ぐために、私自身も”こだわりに付き合う”ことに奮闘したり・・・
と、何かと苦労が絶えない、息子の「こだわり行動」。いや厳密には、こだわり行動からくる、その日一日中持ち歩かなければ気が済まない「こだわりモノ」。
朝から寝ている時まで握りしめている、この「こだわりモノ」は、息子が毎日、自分で決めています。何日も同じものを持ち続ける日もあります。
さらに最近、この”持ち歩くアイテム”が決まらず、パニックを起こすことが増えました。
上記の他記事にあるように、「本当は持ちたいアイテムがあるけど、小さいから、口に入れちゃうから持てない」とか、「本当は持ちたいイメージ物は決まっているのに、イメージに合致するアイテムがない」とかではありません。

脅迫症状によって口に入れてしまう懸念がある時は、ジッパー付き保存袋に入れてから持ち歩くし、イメージするアイテムがない時は一緒に作ることにしています。
それなのに、

今日、何を持って(保育園に)向かえばいいのか、分からない!
今日、何を持って、ベッドに行けばいいか、分からない!
と、癇癪&パニックを起こすことが増えました。
家を出る時、夜寝ようとしている時に、この癇癪が出ると、時間が押されます。
家を出る予定時刻が過ぎても、「何を持って行けばいいか分かんない!の!」
寝る時間が過ぎても、「何を持って行けばいいの!!ん!!」
と始まることで、私自身、時間を守れずイライラが募のる日が増えました。
「自閉症スペクトラムとこだわり行動への対処法」を読んで知った衝撃の事実!
私が何度も読み返している本に、白石雅一先生・著「自閉症スペクトラムとこだわり行動への対処法」という本があります。
以前読んだ時は、個々のこだわり行動に対する、具体的な療育的な対処方法について着目していました。
今回は、こだわり行動の種類やパターンに着目して、読んでいました。
冒頭の章で釘付けになりました。
読み始めの最初の方に「ASDのこだわり行動とは」という目次があって、こだわり行動の概要(というか「こだわり行動」を知るには充分なくらいの要点)がまとまっています。
そこに、
- ASDの人もこだわり行動に「飽きる」
- こだわり行動に周囲が巻き込まれて、周囲に移行する
という事実&現象があると書かれていたのです。
私にとって、衝撃でした。
ASDの”こだわり行動”に「飽きる」、「周囲が巻き込まれて移行する」ってどういうこと?
ASDの人が、自分でこだわって始めたにも関わらず、飽きて、うんざりしているのに、自分ではやめられず、うんざりしながらも「こだわり行動」を続ける-。
というのが、『こだわり行動に飽きる』という現象。
ASDの人の「こだわり行動」に付き合って、率先して対処することで、気が付くと、その「こだわり」が対処していた周囲の人に移行してしまい、ASDの人がその「こだわり」に付き合わされる逆転現象-。
というのが、『周囲が巻き込まれて移行する』という現象です。
息子の「こだわりモノ」を見失うと、自宅や外出先を問わず、一生懸命になって探す自分の姿が、「こだわりが移行した周囲の人」として重なりました。
息子の場合は、まだ自分から「こだわりモノ」を求めているから、完全に”移行”したわけではない。
でも、”こだわり行動に付き合う”ことと、”こだわり行動が移行してしまう”は紙一重な部分もあるから、こだわりに向き合う上で、きちんと意識しなければならない!
それから、ASD本人でさえ、”こだわり行動自体に飽きる”という事実がある、ということは、常に「息子が今でもこだわっているのか?」という視点で、客観視しなければならない!
と思いました。
”持ち歩く行動”に飽きているのか?試しに「何も持たない」案を提案してみた!

今朝も、ここ数日ではお馴染みのセリフが、飛びました。
保育園に行きたくない!という感情も重なって、「なにを持って行けばいいか、分からない!」とパニックになりました。
昨日までは、
・10分くらいなだめて何を持つか決めさせるか
・今は持っていないアイテムを持ちたい場合は、5分くらいで手早く、画用紙・厚紙・ボンドを使って新しいアイテムを作る
という対応でした。
今日は、
「アイテムを持って家を出る」という”こだわり行動”に、本人も”飽きて”いるのかもしれない。
という視点を持ちました。
本で知り、学んだことが本当なら、これは本人さえ自分のこだわりに飽きているにもかかわらず「やめられない」状況なのかもしれない・・・。
更には、自分のこだわりに”飽きている”ことにさえ、気が付いていないの状況なのかもしれない・・・。


白石先生に教わったことを実践するがごとく、「握って持って家を出る」ということに、こだわらなくて良いのだと、具体的に言ってみました。
手のひらが「からっぽ」でも、「行ってきます」はできるのだと伝えました。
持って行くものが分からない時は、手の中が「からっぽ」でも安心なのだと、説明しました。
持って行きたい時だけ、持って行けばいいのだと、説明しました。
重要なのは「こだわりを自分に移さない」「こだわりの意味に向き合う!」ということ
すると、どうでしょう。
息子は今日、何も持たずに保育園に向かいました!
手のひらは、両手とも空っぽの状態で、玄関を出ました!
家に帰ってくれば、また図鑑やゲーム攻略本を読みだして、頭の中に新たなイメージが沸いてくるでしょう。
そこで「手に持ちたいアイテム(=イメージ)」が決まった場合は、また作ってあげればいいのです。
今後も、何を持ったらいいか分からない時は、パニックを助長するのではなく、「何も持たない」ことを選択できるように、導いてあげたいと思いました。
「じゃぁ、これは?」「こっちにする?」「これを作る?」…と、何かを持って行くこと前提にあたふたと動いていた自分は、まさに『こだわりが移行している状態』にでした。
息子のこだわりを自分に移行せず、客観的に判断することを心掛けなければ。
息子のこだわりが、息子にとってプラスなのか、意味があるものなのか、見極めなければ。
息子のこだわり行動に対して、本人が飽きているのか、本当はうんざりしているのにやめられない状況なのか、冷静に判断しなければ。
こだわり行動の意味を常に考えた上で、向き合っていこうと決意したのでした。
今回の主役となった「自閉症スペクトラムとこだわり行動への対処法」
※表紙の男の子が、息子(5歳)の姿と重なります。
こだわることで安心するのでしょうか?
ASDのことについては良く分かりませんが、色々と大変ですね。
>徳浪正樹 さん
コメントありがとうございます。
ASDについてよく分からない方が、ASD系のブログに訪問して下さったことが嬉しいです。
こだわり行動には「変えないこだわり」「やめないこだわり」「始めないこだわり」という3パターンがあると言われています。
それぞれのこだわり行動が、どんな言動として現れるかは、人それぞれ違います。
息子の「アイテムを手に握って行動する」のは、
持ち続けることを「変えないこだわり」でもあり、「やめないこだわり」でもありますね。
変えないことによって安心する、やめないことによって安心できる、と捉えることもできますが、「安心感」だけでは片づけられない複雑さを持ち合わせています。
難しいですね!