息子の感覚過敏の特徴は、成長するにつれて形を変えています。
今回は、聴覚過敏(特定の音を嫌がる・怖がる)という特徴の変化をまとめながら、「耳をふさぐ」という行動にスポットを当てたいと思います。
5歳になった息子の「耳塞ぎ」について分析しました。
目次
最初は”音”に敏感、”大きな音”が苦手と理解していた。
息子の感覚過敏という特徴は、もともと生まれ持っていたと思っています。「寝ない赤ちゃん」記事でご紹介した通り、あの”寝ない地獄”を経験すれば、誰がなんと言おうと”過敏さ”は産まれ持っていた、という直感があります。
母親の直感って、当たるものでしょう?
「大きな音」が苦手であることは、息子が0歳の時から実感していました。
聴覚過敏だから「音」に敏感で、「大きな音」がすると寝れなかったり起きてしまったり、怖かったりするんだ、「大きな音」が苦手なんだ。
-と、理解していました。
”特定の音”を怖がる-複雑な過敏を知る。
暫くすると、全ての「大きな音」に対して、同じ反応を示しているわけではない…と気が付きました。それが1~2歳の頃かな?
「大きな音」がした時/しそうな時は、必ず耳を塞ぐ-。その姿はあまりに頻繁で、先生が撮影する保育園写真には、息子の「耳を塞いだ姿」ばっかり写っています。
でも「大きな音」がするからと言って、毎回耳を塞ぐわけでもないし、その怖がり具合も違う。逆に音自体はそんなに大きくないのに、大袈裟だと感じるほど怖がる。またある時は、まだ音が聞こえていないのに怖がる。
ようやく「特定の音」を嫌がるという特徴について、理解し始めました。
音の大きさ的には同じなのに「特定の音」と「何気なく聞き逃せる音」。この両者を隔てるものは何だろう?息子にとって「特定の音」に分類される音って何だろう?
この答えが(自分なりに)分かった!
…その時が、あの「風船の割れる音」と「ドアの音」の出来事です。
3歳の夏頃から、目立ち始めた「風船の割れる音」への過敏反応。
「ドアの音」に敏感で、耳を塞ぐ写真が目立ったのは、4歳の時。写真の中には、半袖や甚平姿で耳を塞いでいる場面が多いから、4歳の夏です。
「風船の割れる音」や「ドアの音」を通して、怖がる「特定の音」には、精神的なショックが大きく影響していることを知りました。
いわゆる感覚過敏・聴覚過敏は、一人一人まったく違うものだし、たとえ同じ子であっても症状や特徴の現れ方が成長と共に変わってゆく、複雑で繊細な過敏症なのだと知りました。
敏感な子の”過敏”を和らげるために、大切なのは「精神的な安心感」だと知る。
そんな息子も5歳になり、よく「耳を塞いでいた子」が現在、どうなったかと言うと…。
「ドアの音」に耳を塞がなくなったんですよ!
「ドアの音」を怖がらなくなりました。
怖がっていた時の”対処方法”は前段記事の通り。これを続けて続けて続けると、不思議と目に見える効果が現れました。
<私が取っ手を持ったまま、ドアの音が鳴らないように閉めるシーン>における変化
耳を塞ぎながら、「ドアが閉まる」のを最後まで見届ける。
↓
耳を塞ぎながら、「ドアが閉まる」のを途中まで見届ける。
↓
耳を塞ぎながら「私が取っ手を持っている」のを確認すると、耳から手を離して「ドアが閉まる」のを見届ける
↓
「私が取っ手を持っている」のを確認すると、もう耳は塞がず、「ドアが閉まる」のを見届ける
↓
「私が取っ手を持っている」のを確認すると、もう耳は塞がず、「ドアが閉まる」のを気に留めない
こうして、全く「ドアが閉まる」のを気に留めなくなりました。
今では、私が「取っ手を最後まで持ったまま」「音がならないように」閉めなくても大丈夫になりました。
バタン!という大きな音が、必要以上に鳴らないように注意はしていますが、「ドアの音」に対する過敏がなくなりました。
ドアが変わったわけでも、ドアの音が小さくなったわけでもない。同じ音なのに、怖かった「特定の音」が「何気なく聞き逃せる音」になったのは、それを感じる息子自身が成長(≒安定)したからだと思います。
感覚過敏な子の「過敏さ」を和らげるために大切なのは、精神的な安心感をもたらすことなんだ、と実感しました。
なぜ「それ」が起こるのか(鳴るのか/聞こえるのか/見えるのか)、理由を説明することが、すごく大事です。説明によって、本人が理解納得することが、精神的な安心感に繋がるからです。
敏感な子を安心させるために大切なこと
「風船の割れる音」はどうなったかと言うと…。
息子の中で「風船の割れる音」が、今でも「特定の音」に分類されていることは確かです。でも、”風船を見て耳を塞いで怖がる”という3歳頃にあった反応はなくなりました。
風船を見ると、「割れちゃうから要らない」と言って、あえて風船に近づかなくなった。
が答えです。
私はそれで嬉しいです。
大丈夫だから「風船の割れる音」を恐れるな!なんて微塵も思っていなくて-。
”空気を入れ過ぎたり、穴を開くような刺激を与えると、パンっと音を立てて割れてしまう”という、風船について今まで説明されたことを息子なりに理解しているからです。
”どうして怖い(と感じる)音がするのか?”を理解することで、何も知らない時よりも闇雲に怖がってはいないからです。
なぜ「それ」が起こるのか(鳴るのか/聞こえるのか/見えるのか/etc)、理由を説明することが、過敏の軽減にも繋がる大切なことだと分かりました。
感覚過敏な子が「耳をふさぐ」時
ここまで来ると、5歳の息子がなぜ”耳を塞いでいる”のか、分かります。
もう「特定の音」じゃない。
「特定の音」を怖がって、耳を塞いでいるんじゃないんですよね…。
5歳の息子が、耳を塞いでいるシーンを例に挙げてみましょう。
・お父さんが暗闇に隠れて「わー!」と出て来そうな時
・テレビの出演者が「やだやだやだやだ」と連呼している時
・誰もいないはずの部屋で、何か物音がした時
だいたい「音」に絡んではいるのですが、「音」じゃない。
ずばり、
怖い時
なのです。
「怖い時に、耳を塞ぐ」のです。
感覚過敏・聴覚過敏な子にとっては、「音が鳴りそうで(聞こえそうで)怖い」という感覚なのか、もしかすると「怖い」という感覚は「音」とは切り離せないのかもしれません。
あるいは過去に、「音」で怖かった感覚を覚えているから、「音」と関係ない「怖い」時も耳を塞いでしまうのかも。なぜなら…
もしも「怖い時の仕草をしてみろ」と言われたら、私だったら耳を塞ぐんじゃなくて、両手で口元を押さえる仕草、あるいは、腕を組んで肩をすくめて固まる感じかなぁ?と思うからです。皆様はどうですか?
いずれにしても、息子は、怖い時に耳を塞いでいます。
自閉症スペクトラム・感覚過敏な息子に対して、怖かった「ドアの音」を作ってしまったのは私自身なので、この問題はシビアに捉えていました。
でも、息子が「耳を塞ぐ時」というのが、成長と共に変化して、「特定の音」から「怖い時」に変わり、どういう感じで対処していけばいいのか分かってきて、徐々に前向きになれました。
いつか、息子が「耳を塞ぐ時」は、他の人も耳を塞ぐような時であり、他の誰かが見ても違和感ないようなタイミングで耳を(自然に)塞いでいれば、それがゴールなのかな?
自閉症スペクトラム障害の特徴は「治す」のではなく、生活に支障がないレベルまで「軽減・緩和させること」が大切だと、読んだ書物で勉強したことを思い出しました。
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