小学校入学前の就学相談の流れの中で、息子は発達検査を受けました。
息子の特性を客観的に評価できる機会でもあり、就学先は特別支援学級か普通級か決断するために必要な評価でもありました。
今回は、当時5歳の息子が受けた発達検査(知能検査)についてまとめます。
発達検査・知能検査の種類
発達検査には種類があり、厳密には「発達検査」と「知能検査」は違う検査だと分かりました。
ただ、息子の就学相談の流れでは、下記の分類では「知能検査」に分類されるカテゴリーなのに「発達検査」と呼ばれていました。教育委員会では便宜上、ひっくるめて「発達検査」と位置付けているのかもしれません。
発達検査として分類されるもの:
新版K式発達検査、乳幼児精神発達検査、日本版デンバー式スクリーニング検査、日本版Bayley-Ⅲ、乳幼児発達検査、など
知能検査として分類されるもの:
WISC−Ⅳ、WAIS−Ⅲ、田中ビネー知能検査Ⅴ、など
その他:
人格検査、描画検査、など
発達検査・知能検査は、調べてみると上記のような種類があると分かります。
今回、息子が就学相談の流れの中で受けたのは、「田中ビネー知能検査V」「S-M社会生活能力検査」「グッドイナフ人物画知能検査」です。
便宜上、私も以下、受けた検査をまとめて「発達検査」と表現しますね!
発達検査の流れ
ASD(自閉症スペクトラム)の特性がある息子は、初めての場所や予測がつかない事柄が苦手です。検査場所も検査自体も初めてで、当日を迎えるまでの準備も大変でしたが、なんとかここまで辿り着き、机に座り、カウンセラーと向き合いました。
この日に受ける発達検査は、「田中ビネー知能検査V」「S-M社会生活能力検査」「グッドイナフ人物画知能検査」ですが、検査の種類や形式は、事前に説明されたわけではありません。
どの種類の検査を受けているのか、受ける側は意識しないまま、促されるがままに進行する感じでした。
発達検査の順番は、「田中ビネー知能検査V」→「グッドイナフ人物画知能検査」→「S-M社会生活能力検査」でしたが、通常は「S-M社会生活能力検査」は他の検査と並行して同時に実施します。
「S-M社会生活能力検査」は、子供本人ではなく保護者が質問項目に答える形式なので、子供が発達検査をしている間に、親が「S-M社会生活能力検査」を受ける流れが一般的とのことでした。
私は(母子分離不安症の)息子と一緒に、最後まで発達検査に同席したため、「S-M社会生活能力検査」を同時進行できず、発達検査終了後に実施しました。
「田中ビネー知能検査V」とは?
就学時版の田中ビネー知能検査Ⅴの概要・受診方法・費用など
https://h-navi.jp/column/article/35025627
『りたりこ発達ナビ』より
就学時に受ける「田中ビネー知能検査V」については、LITALICO(りたりこ)発達ナビで分かりやすく紹介されています。
「田中ビネー知能検査V」は、検査対象が2歳~成人という、幅広い年齢層で受けられる検査です。息子は、5歳で受けました。
実施時間は、約60~90分。1時間以上かかると見た方が良いと思います。
検査項目ごとの「できる/できない」を年齢基準で評価されるので、保護者にとっても「実年齢は○歳△ヶ月だけど、精神的には○歳△ヶ月」という感じで理解しやすいです。
その上で、総合的なIQが算出されるため、「全体的な知能としてどうなのか?」という観点でも把握しやすいと思いました。
「田中ビネー知能検査V」項目の順番・始まり方・進め方
発達検査の始まり方は、「よーい始め!」という合図もなく、始まりのGOサインもありません。
担当カウンセラーが、子供の警戒心を解こうと気にかけて話しかけてくれている中で、なんとなく出題に入って行く…という感じでした。
進め方も、1つの検査項目が終わるタイミングで「じゃあ、次はどれにしようかな?」と言いながら、用意されている資料や道具の中から探して取り出し、次の出題の準備をする感じでした。
「田中ビネー知能検査V」は適応年齢を評価していくので、各検査項目の結果「できた/できない」によって次の出題内容を見分けていくことで、何歳レベルはOK/NGを判定しているようです。
この検査項目がOKだったら次の出題はこれ、と出題の順番は決まっている中で、あえてゲーム感覚な雰囲気を醸し出してくれました。
実際には、問題Aができたら問題B、できなかったら問題C…のように、パターン化されている検査らしい。1つ1つの結果に応じて、次の課題が出題される感じでした。
発達検査「田中ビネー知能検査V」の内容
「田中ビネー知能検査V」は、口頭だけの質問、紙を見て内容について質問、図形の書き方、手先を動かす作業…etc。特性や傾向を把握するべく様々な内容の項目がありました。
倫理的な問題上、具体性を少し欠いた概要レベルに落として、実際の検査内容をご紹介します。
絵カードで「単語力・語彙力」を試す
絵カードを1枚ずつ見せられました。絵を見て、その名前(単語)を答える問題です。
息子は、絵本より図鑑ばかり見る子なので、文章よりは単語力に自信はあり。本人も得意気に答えていました。
1つだけ聞き直されたのは、「木」の絵。
「木」の絵を見て「森」と答えてしまいましたが、カウンセラーの応対を見て、”何か間違っているのかも?”と察したようです。
自分で最後に「木!」と言い直すことができました。
もしも答えが「森」のままだったら、どうやって判断されるのか気になります。
「語彙力」と「発想力」を試す”〇始まり”言葉
語彙力だけでなく発想力も試す質問だと思いますが、「ある文字で始まる言葉」をいくつか言うテストがありました。
例:「あ」で始まる言葉は?
1個しか単語を言わないと、「他には?」と聞かれました。
複数個の単語を言えるかどうか見ているようです。
「反対語」が言えるか試す質問
「反対語」が言えるか試す質問をされました。
質問というより、後に続く言葉を言うように促される感じです。
隣りで聞いていて、意外と難しい出題の仕方をするんだな、と思いました。
という感じです。
話題にされた対象物について、大きい・小さい・早い・遅い・長い・短い…という特徴を知っていないといけない上に、反対語を意識しなければなりません。
人間の体の位置・名称・その感覚機能が分かるか試す質問
人間の体の一部を指して、「これは何?」と聞かれました。
例えば「耳!」と答えると、「何をするところ?」と聞かれました。
この場合、「(音を)聞くところ」が正解です。
正解すると、逆質問やレベルアップ質問もされました。
「じゃあ、右の耳はどこ?」
「じゃあ、”見る”ところは?」
と言った具合です。
私は、「右と左を聞いてくる質問は、絶対に出題されるだろう」と予測していました。だから、息子には事前に右と左を教えていました。
カウンセラーに聞かれた通り、「右の耳」を触って答えた息子は、満辺の笑みで勢いよく私の顔を見ました。
「右」が合っていたことよりも、私が教えたことを覚えていた上に、「本当に出たよ!お母さん!」という思考回路に至ってくれたことが、すごく嬉しかったです。
お手本と同じ図形を書く
お手本となる図形を見せられて、同じ大きさで同じ形を書くように言われました。
1回目にキレイに書けると、2回目・3回目と同じことを言われて、同じ図形を複数回、書きました。
1回目より雑になっていくことが「普通」と判断されるのか、何度やっても几帳面に書く子が要チェックとされるのか?
息子の場合は、同じ図形を3回書きましたが、3回書かされる意味は分かりませんでした。
動くものを覚える?「記憶力」を試す
3つの小さな玩具が、並べられた順番を覚えるテストがありました。
- その順番を保ったまま動かして、トンネルに入って一旦見えなくして、暫くしてトンネルの先から出てくる時に、一番先に見える玩具の名前
- その順番を保ったまま動かして、トンネルに入って一旦見えなくして、暫くしてバックして、お尻側から出てくる時に、一番先に見える玩具の名前
動かすことに意味があるのか、単に電車ごっこに見立てるようなやり方の方が親しみやすいから動かしているのか?
細かい狙いは分かりませんが、「記憶力」を試していることは分かりました。
「記憶力」と指先を同時に使う作業
大きな木製ビーズを紐に通す作業が試されました。
通す木製ビーズの順番は決まっていて、カウンセラーがお手本で作った通りの順番です。
木製ビーズは、左から見ても右から見ても、同じ並びでした。
だから左右逆転をチェックするようなテストではなく、「見て記憶しながら、同時に指先を使う作業」のテストなんだと思います。
絵を見て「不自然なところ」を答える
絵を見て、「何かおかしい所はない?」と聞かれた時に、不自然なところを探して答える、というテストがありました。
息子にとっては、これが一番、色々な意味で「難しい」と感じました。
例えば、『雨の中で、バーベキューパーティーをやっている絵』を見せられました。
”雨がふっている”と認識することも、絵だから少し難しい部分があるのですが、息子の場合、もしも「雨である」と気が付いたとしても、それが「おかしい」と思わないのでは?と思いました。
「遊んでいたら、雨が降って来ちゃった」と思うだけで、その絵が不自然だとは思わないだろうなぁ、と感じました。
絵は3枚見せられましたが、息子は全て「分からない」と答えました。
ギフテッド用?視覚と言語の処理能力が優れた子供じゃないと難しい問題
大人でさえ、よく聞き取らないと質問と答えが分からない問題も出ました。
- 白い蝶、黄色い蝶、それぞれ数がバラバラの絵
- 赤い花、黄色い花、それぞれ数がバラバラの絵
この2枚の絵を見せられて、
「白い蝶がXX匹います。黄色い蝶がXX匹います。赤い花がXXつあります。黄色い花がXXあります。黄色い蝶は、黄色い花に止まります。白い蝶は、赤い花に止まります。お花に止まれない蝶は、何色の蝶ですか?また、それは何匹ですか?」
この質問を(ゆっくりではあるけれど)一気に言いました。
えぇ!?
「何色の蝶ですか?」かと思いきや、最後の「何匹ですか?」と来たので、私でも白い蝶と赤い花の数を目で追って、再確認してしまいました。
これは、5歳に無理でしょう…。
案の定、息子は、白い蝶の「全部の数」を答えていました。
5歳児がこの質問に正解できたら、逆に不自然では?
大人が話す言葉を、最初から順序よく聞き逃さずに聞ける子は、答えられるのか?
この問題は、ギフテッドを見分けるためのものか?
そんな印象を受けました。
描画テスト「グッドイナフ人物画知能検査」とは?
息子が「田中ビネー知能検査V」に続けて受けたのは、「グッドイナフ人物画知能検査」です。
「〇〇の絵を描いてください」と言われて、その絵を鉛筆で書きます。
息子に出された「お題」は、「男の子」でした。
顔があるか、髪の毛はどうか、何頭身か。
どんな人物を書くのかによって、生活年齢に対する「精神年齢」と「IQ」が評価されます。
その他の検査「自分の名前が書ける?」記名テスト
最後に、自分の名前を(ひらがなで)書くテストがありました。
「グッドイナフ人物画知能検査」で描いた用紙の余白に、書かされました。
「S-M 社会生活能力検査」とは?
親が”問診”のような、ヒアリングをされる「聞き取り調査」もありました。
「はい」「いいえ」で答える細かい質問が並びますが、未就学児に対する質問としては違和感を覚える項目も多かったので、おそらく小学生(低学年)の保護者向けと共通です。
例えば、「学校まで一人で行けるか」「一人で入浴できるか」とか。迷わず「いいえ」が付く項目がたくさんありました。
途中で「はい」や「いいえ」が一定数揃うと、他のページに飛んでいたので、子供の傾向をつかむための調査表のようです。
この”聞き取り調査”の検査名は、「S-M 社会生活能力検査」です。
生活年齢(CA:実際の年齢)に対して、「社会生活年齢(SA)」と「社会生活指数(SQ)」が分かる検査でした。
発達検査の所要時間
今回の発達検査の所要時間は、約1時間半でした。
13:00から始まって、終わったのが14:30頃です。
- 最初の不安を軽減させるところで時間を要したこと
- 親の”聞き取り調査”は、子供の発達検査中に並行して実施できること
を考えると、本来であれば1時間くらいで終わるのだと思います。
私は、息子の発達検査中に離れることができなかったため、発達検査が終わってから、自分が受ける「S-M 社会生活能力検査」を実施しました。
実際には、1時間半よりも、もっと時間がかかった印象。超疲れました。
一番頑張ったのは、息子本人ですね。
結果がどうであろうと、眠くて疲れている中、机にちゃんと座って質問に答え続けた息子の姿は、100点満点以上でした。
はじめまして。幼稚園年中自閉症の女の子の母親です。
息子さんが田中ビネーで木の絵を森と答えた事を書いてらっしゃって、娘も同じ回答をしていたので興味深いなあ、と思ってコメントしています。
日頃から娘と私は物の見方が違うと思う事があり、それがビネー検査で凄く分かりました。
他にも、絵が一緒か違うかを言う検査で、みかんとりんごを同じと言ったり(果物というカテゴリで一緒だから)
バーベキューの絵では、皆雨なのに笑っているねぇという発言←そこか?!と思わず大笑いしてしまいました!
視点が違うんだなあと思います。昔は娘を同じ視点に合わせようと必死になっていました。今はそんな子がいても、違う方向を見てる子がいても良いかもと思うようになりました。
娘と同じ回答をしてくれた息子さんが嬉しかったのでカキコミしました。
ちなみに娘は森以外は言えたのですが、1つだけ森と間違えたのでその問題?は不可になっていました。
>まゆき さん
初めまして、コメントありがとうございます。
バーベキューの絵で「雨なのに笑っている」と気が付いたお嬢さん、素晴らしいですね。
みんなと視点が違っても、全然良いんだと思います。
私も、今はむしろ、息子の”他の子と違う視点”が誇りにさえ思います。
「木なのに森」発言だって、森を知っているからこそ出てくる単語だし、普段から「森に行こう」と息子を誘って散策しているからこそ、息子にとっては「木」より「森」の方が身近な単語だった。
検査は、模範解答や基準があって、それとどうブレてくるか見るものだから、結果的に凸凹が見えてきますが、、、
感じ方や捉え方は、むしろ”人それぞれ”で良いと思っています。